放射能汚染された土地で暮らす人々の姿を淡々と描くことで、その危険性を静かに問いかけるオーストリア映画「プリピャチ」がアップリンク(東京・渋谷)で4月13日まで公開されている。
事故以前は、約50000人の住民がいたが、大半が強制的に避難、移住を余儀なくされた。しかし、撮影時(99年)にも、15000人が原発や放射能の影響を調べるために区域内で交代制で働いていた。
また、許可を得て帰還した約700人も区域内で生活していた。登場する老夫婦は事故後、クリムに移住するも、93年に帰村した「自主帰還者」だ。「ここで生まれ、ここで育った。ここで生きたい」と語る。そのリスクを知りつつも、放射能に汚染された水を汲み、自分たちの畑でとれた作物を食料にしている。
別の登場人物、マリヤ・ブルカは立入禁止区域の境界地域で暮らし、10年以上も移住の順番待ちをしている女性だ。「ここに住むのを皆、怖がっている。生活条件は一向に改善されない。それどころか、もう、誰も私たちのことを気にかけてくれない」と諦めた口調で話す。
全編を通じて、感じた奇妙な点は、登場人物が皆、事故発生から12年後の撮影時にもしっかり生きていることだ。登場人物の中には、豊かな自然の恵を享受し、穏やかに暮らす者も少なくない。
だからといって私たち、日本人が穏やかに暮らせる理由は一つも見つからなかった。むしろ、「慣れるな。恐れ続けろ」と言われている気がしてならなかった。(オルタナ編集部=赤坂祥彦)
映画「プリピャチ」公式サイト