東日本大震災による津波の被害が甚大だった宮城県牡鹿郡女川町は、山間部を残してほとんど壊滅した。そこで震災直後、未来を拓く人材が生まれる土壌を作る任意団体「ちきゅうの子22プロジェクト」の代表・蓮見洋平(34)さんと神奈川県鎌倉市のスパイス会社アナンのメタ・バラッツさんは、炊き出しに向かった。

きぼうのかね商店街の店舗の前に集合した女川カレープロジェクトのメンバー。左からメタ・バラッツさん、蓮見太郎さん、阿部美和さん(女川カレープロジェクト代表)


避難所で全員が口にできるよう、血流を良くして体が温まるスパイスを使ったカレーを作り、食べてもらった。胃腸に負担がかからないように消化に良い豆を使い、お年寄りもこどもも食べられるように刺激が強くないやさしい味にしたという。

しかし、「おいしかったよ」「ありがとう」と言われても、蓮見さんは無力さを感じた。いくら支援しても、し足りない。そんな現状を目の前に、もっと力になりたいと思うものの、支援者にもそれぞれの生活がある。個人のボランティアでは経済的に限界が来る。

支援を持続するにはどうしたらいいのか。遠く離れていてもできる支援は何だろう。一過性の話題に終わらせず忘れられないようにするには…。そんな時に頭をよぎったのが、炊き出しで作ったカレーだった。

蓮見さんは言う。
「炊き出しで作った特別ブレンドのスパイスカレーを商品化して全国で販売。女川町に商品の製造作業所を作って若者たちの雇用を生み出し、新しい観光資源の一つとしてカレーで街おこし。それが『女川カレープロジェクト』です。チャリティや復興支援の寄付のつもりでは、一回買ってもらったら終わり。やるからには味で勝負します。女川にはさんま、銀鮭、ホタテ、ホヤ、有名なかまぼこなどの海の恵みがあります。美味しいからまた食べたい。だから、何度も買っていただけて女川のファンになる。地域の名産の一つとして50年、100年と歴史を刻んでほしい」

4食分のカレールゥが入った一個650円(税別)のキットは、「女川カレープロジェクト」のホームページから購入できるほか、女川町商工会や東京・松屋銀座など全国の実店舗でも取り扱っている。

現在、震災で職を失った女川町の阿部美和さんを代表とし、女川高校のグラウンドに出来たきぼうのかね商店街でも販売を開始。町内での製造に向けて準備中だ。(今一生)


●女川カレープロジェクト
http://onagawacurry.com/