国際協力活動をする人にとってのジレンマの一つである、無関心層への伝え方。いかにして、興味のない人たちに伝えることができるのか。若者ならではの方法で国際協力活動をする学生たちに、伝え方のヒントや悩みを聞いた。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)

カラーバットを渡す小泉勇太さん(写真左)


2011年2月に設立され、野球を通して国際協力をする学生団体WorldHit(ワールドヒット)。チャリティー野球大会を開催し、その収益金をガーナの子どもたちへの支援に回す仕組みである。これまでに、支援先であるガーナの現地視察や、計3回の野球大会を開催してきた。

同団体代表の小泉勇太さん(獨協大学3年)は、「『国際協力』や『途上国』といった部分にあまり関心を持っていない人に、まず『野球』というみんなが参加しやすい入り口をつくることで、より多くの人々に伝えていけるのではないかと考えいる」と話す。

主催するチャリティフットサル大会では、学生を中心に毎回多くの参加者が集まる


2008年の6月に設立され、サッカーを通して国際協力をする学生団体WorldFut(ワールドフット)。チャリティフットサル大会を開催して、その収益金でカンボジア支援を行う。

これまでに国内外合わせて計11回のチャリティフットサル大会を開催し、カンボジアへのスタディツアーなども行ってきた。2010年には、フェアトレードフットサルボールを600個販売し、その収益でカンボジアの小学校にグラウンドを建設した。

同団体のメンバーである山崎玉美さん(聖心女子大学3年)は、「途上国で見たことも聞いたことも自分の一視点でしかなく、果たして自分が伝えてよいものか悩んだ」という。

見たものを整理して客観的に落とし込んだときにはじめて、主観と事実を分けて伝えようと思えたと語る。

無関心層に伝える工夫としては、「ハードルをさげて無理なく自然な形で伝えようと思った。フットサル大会において参加目的がフットサルである参加者に対して、コート内に拡大した写真を貼ることによって、待機時間などに途上国の風景を見えるようにした。自分たちの等身大で感じたことをまっすぐに参加者に伝え、まずは知ってもらうことのきっかけをつくった」と話す。

また、心がけたこととして、途上国とひとくくりにするのではなく、『世界のなかの一国』として発信したという。「途上国も日本も世界のなかの一国、そこには一人一人の生活があり、想いがあり、幸せがあるということを少しでも共に考えられるように工夫した」と話す。

フィリピンでの集合写真

東南アジアの自立支援をする学生国際協力NGO FEST(フェスト)。今年3月からフィリピンの貧困街に住む人びとの自立支援活動を5年の歳月をかけて実施している。

これまでに、約1年に渡り支援活動の基盤作りに動いてきた。計2回のフィリピンへの現地調査を行い、ニーズを吸い取った。

同団体を創設した倉田拓人さん(日本大学法学部4年)はこれまで13の国際協力系団体に所属してきた。

途上国の現状を理解して伝えるためには、まず現地目線になることが必須だという。現地の人の目線と離れていると、現地で得た情報を鵜呑みにしてしまうことがあるからである。

現地目線になればなるほど、現地人の情報に近づき、自信を持って相手に伝えられるという。妥協しないで、正しい情報を伝えていくことと、わからないことには、わからないと素直にいうことが大切だという。

悩んだこととしては、今の国際協力の現場は、生命維持の闘争よりも社会権的な闘争が圧倒的な割合を占めていることという。「例えばジェンダーや社会福祉、教育レベルの均一化などがあるにもかかわらず、国際協力というと、痩せ細った幼児が死んでいくような現場でそれを助けるようなことをしていると、理解している人がまだまだ圧倒的に多いと感じる。なので、伝える手法と場面ごとの情報の選択に苦労している。そのため、1国だけでなく時事問題に精通することで例示ができるよう、日々アンテナを張るようにしている」と話す。


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