1986年のチェルノブイリ原発事故をきっかけに、「子どもたちに原発のない未来」を目指して立ち上がった市民グループ。いまや自然エネルギー100%の独電力会社「シェーナウ」として、独全土で1万3千世帯に電力を供給する。国際環境NGO・FoEジャパンは、シェーナウの軌跡を追ったドキュメンタリー映画「シェーナウの想い」を東京ウィメンズプラザ(東京・渋谷)で18日に上映した。
当時シェーナウ市には、原発に出資している大手電力会社KWRが電力共有をしていた。地域の送電線を独占し、巨大な資本を持つ電力会社に立ち向かうのは容易ではなかった。
だが、地域住民や銀行、広告会社などから協力を得ながら、長い年月をかけて電力網を買い取るための資金集めに成功した。2度にわたる市民投票を経てようやく、1997年、ドイツで初めての自然エネルギーのみを供給する市民による電力会社が設立された。
映画を通して見えてきたのは、圧倒的な市民の団結力と自然エネルギー社会を実現したいという思いが、社会を変えるという事実だった。
上映後にはトークライブも行われた。ドイツ在住ジャーナリストの田口理穂さんは、「ドイツは、2020年までにすべての原発を停止する。自然エネルギーの比率も2020年までに35%、2050年までに80%と目標を定めているが、環境省は前倒しで実現できそうだとしている」と話した。
自然エネルギー推進市民フォーラムの都筑建理事長は、「シェーナウのように住民が主体となって、自然エネルギーによる電力会社をつくるには、オープンな市民ファンドの仕組みが必要だ。日本ではNPOバンクがその可能性を持っているのではないか」と期待を込める。
シェーナウ創業者の一人で、当時は主婦だったウルズラ・スラーデクさんから、福島第一原発事故を受けて、日本向けにメッセージも届いた。
「原発周辺には、絶えず一定量の放射性物質が放出されている。原発がある限り、子どもの健康を守れない。母親には世界を変える力がある。勇気をもって、家から外に、公の場に出て声を上げてほしい。私たちは将来世代に対して責任がある」。(オルタナ編集部=吉田広子)