ミャンマー西部ラカイン州で6月8日、イスラム教従と仏教従の衝突が起き、イスラム教従10人が死亡した。政府は同日、治安回復のため同地域に夜間外出禁止令を出した。衝突した仏教従はラカイン族でイスラム教従はロヒンギャ族。事件の発端は、同日に起きたラカイン族少女の強姦事件。ロヒンギャ族の仕業とされ、ラカイン族の暴行が発生した。しかし、犯人がロヒンギャ族という証拠はない。日本で暮らすロヒンギャ族のカディサ氏に話を聞いた。(聞き手・オルタナS副編集長=池田 真隆)

インタビューを受けるカディサ氏


故郷のことをどう説明すればいいのかわからない

日本で生活するロヒンギャ族のカディサ氏は、「ロヒンギャ族は今、大量に殺害されている。この非人道的な行為を一人でも多くの人に知ってほしい」と訴える。現地で暮らすロヒンギャ族からの連絡がその悲惨さを物語る。

カディサ氏の携帯には、まだ幼い子どもたちが無惨に殺害された写真が現地から送られてきている。「今、ロヒンギャ族は外出を禁止されている。しかし、軍人たちが次々と家に入ってきて一家全員を殺害している。私たちはどうすればいいのか」と電話がきたこともあった。

ロヒンギャ族は、1982年ミャンマー政府が無国籍者として認定した少数民族。人口は70万から100万人とされ、独自の軍を持たず、イスラム教を信仰している。移動の自由や教育、仕事などのあらゆる行動が制限され、1940年代以降、迫害を受けてきた。

ラカイン族からの暴行は過激化し、8日から現在までで1万人以上が無差別に殺されているとカディサ氏はいう。ミャンマー政府も、国教である仏教を信仰するラカイン族側の立場を取り、ロヒンギャ族への対応は杜撰である。

「私たちには真実を言う権利がない。でも、この事態をわかってほしい。もし、あなたの妹が100人にレイプされ、弟が刃物で首を切られたら、耐えられるだろうか。殺害されたロヒンギャたちがゴミのように集められて燃やされている」

カディサ氏のようにミャンマーから逃れたロヒンギャ族は世界中にいる。しかし、ほとんどが難民として認められていない。日本では、200人のロヒンギャ族が住むとされているが、難民として認定されているのは16人である。

「世界にロヒンギャ族はいるが、親戚や友人が置かれている状況に気が動転し、意識不明になる人が増えている。私にも2歳になる子どもがいるが、この子が大きくなったときに、故郷のことをどう説明すればいいのかわからない」と話す。

ロヒンギャ族は他国に逃れようにも、難民としての受け入れを拒否されてしまうことが多い。2009年には、船に乗ったロヒンギャ族が南タイに流れ着いた。タイ国軍は、彼らをエンジンを取り外した船に移し替え、公海上に放置した。結果、1000人もの人々が命を失った。

親戚が離れて暮らさなければいけない状況に、世の中の不条理さを訴える。「私たちは、社会によって無理矢理難民とされ、迫害を受けている。日本もビルマ政府に援助という名目で毎年多くのお金を支払っている。そのお金の一部は軍事利用され、私たちの民族が殺害されていくことに繋がっている。なぜ、この世の中は自分たちの利益しか考えないのか」と虚しさを語る。

今のカディサ氏の希望は、一人でも多くの人に真実を知ってもらうことだ。「ロヒンギャでの事件はほとんどのメディアは取り扱ってくれない。報道したとしても、ミャンマー政府からの情報をそのまま流しているだけである。今、起きているのは民族間の対立ではなく、一方的な虐殺である。若い人には、この事件が非人道的だと理解してもらいたい。そして、数十年後に大人になって世界を変えてほしい」と想いを託す。

今のロヒンギャを作った日本と英国

ロヒンギャ問題の歴史的背景に詳しい上智大学外国語学部アジア文化研究室教授の根本敬氏は、ラカイン族とロヒンギャ族の対立を引き起こしたのは、日本と英国に原因があるという。第二次世界大戦中、ビルマ領土の支配を巡り日本と英国が対立する。

日本と英国は、宗教別に地元の人それぞれからなる軍を作り戦わせた。しかし、その戦いは、帝国主義英国対ファシスト日本というものではなかった。その争いは、イスラム教対仏教徒の血で血を洗う民族紛争、宗教紛争と化していったのである。

この争いが因縁となり、現在の迫害につながっていると、根本氏はいう。

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