6月29日、大飯原発再稼働決定の撤回を求めるデモが首相官邸前で行われた。主催者側の発表によると集まった参加者はおよそ20万人。夜の永田町に「再稼働反対」の声が大きく響き渡った。
デモの主催者は首都圏反原発連合。首都圏でデモなどを主催しているグループや個人が力を合わせようと2011年9月に立ち上がった。デモは毎週金曜日の夕方から夜にかけて行われ、参加者は回を追うごとに劇的に増加している。
参加者のほとんどが、ツイッターやフェイスブックで拡散された情報を元に個人で参加しており、会社員、学生、お年寄り、子連れの家族と年齢層も幅広い。また、友人同士、知人同士でデモに参加している人も多く、デモがひとつのイベントとして認識されているようにもうかがえた。
参加者はそれぞれ自前のプラカードや旗を用意し、政府に対してメッセージを掲げた。また、「子どもたちの未来を返せ」と書かれた横断幕に、参加者が思い思いの言葉を書き込む姿も見られた。この横断幕は7月16日に代々木公園で行われる「さようなら原発10万人集会」で披露される予定だ。
横断幕を掲げていた50代の女性は、「大飯原発だけでなく、他の原発についても恐ろしい早さで再稼働の話が浮上している。弾みをつけないよう、皆で立ち上がらないといけない。もっと大きく、長い目で活動を続けたい」と話していた。
先週のデモでは4万5000人が集まり、「あじさい革命」としていくつかのメディアが取り上げた。その効果もあってか、今回は20万人が参加し、付近の歩道は人で埋め尽くされた。
先週のデモの際、枝野幸男経済産業大臣や細野豪志原発担当大臣は、デモについてコメントを求められても応じなかった。そして29日、野田佳彦首相は首相官邸から公邸に移動する際、デモの音について「大きな音だね」とのみ周囲に漏らしたという。
20万人が叫ぶ「再稼働反対」の声は政治に届くのだろうか。7月1日には大飯原発が再稼働される。私たちの生活や将来の根底にあるのは政治である。そこに私たちの声が反映されることで、民主主義が初めて実現される。私たちの声を拾い、それに答えることから民主主義は始まるのである。
今、少なくとも20万人は声をあげた。あとはこの声に政治が答えるのを待つのみである。それまでこのデモ活動は続けられ、ひとつのムーブメントとして参加者も増えるだろう。原発再稼働は解決の難しい問題である。仮に再稼働について賛成でも、賛成か反対かよく分からずとも、そこにある声やエネルギーの凄まじさを実際に見ることで、何か感じることはあるはずである。(オルタナS特派員=堀川雄太郎)