ヒューマンライブラリーとは障がい者、セクシャルマイノリティ、ひきこもりなどの偏見や差別を受けやすい人々を「生きている本」として貸し出し、語り部である当事者が読み手と対話することで、多様化に対して開かれた社会の実現を目指す試みである。

ココロのバリアを溶かす。ヒューマンライブラリー事始め


ヒューマンライブラリーは2000年にデンマークのNGOのStop The Violence(Foreningen Stop Volden)により、ロックフェスティバルの一企画として開催されたのが始まりである。(当時はリビングライブラリーと呼ばれた)

Stop The Violence(Foreningen Stop Volden)とは、「現在、世界で起きている暴力行為や武力侵略は、人々がお互いのことを理解しあっていないから」という思いのもと、5人の若者たちによって結成された集団である。

世界で最初に開催されたとき、警官、政治家、フェミニストなどが「生きている本」として貸し出された。

ヒューマンライブラリーの発案者のひとりであるロニー・アバゲールはヒューマンライブラリーを世界に広めようと多くの国を回り歩き、その活動が評価され、北欧理事会と欧州評議会の支援を得ることができた。

ヒューマンライブラリーは2000年にデンマークで開催されたのをきっかけに、北米、オーストラリア、アジアなど2011年9月までに60カ国以上で開催され、日本では2008年から2011年12月までにヒューマンライブラリーは28回開催されている。(この数字は日本事務局が把握しているもののみである)

日本でのヒューマンライブラリーはリビングライブラリー日本事務局による開催が最も多いが、大学やNPO法人など、多様な団体や個人が開催している。大学ではこれまでに青山学院大学、京都大学、札幌市立大学、明治大学、駒澤大学、獨協大学による開催が報告されている。

自分の抱えている障がいやトラウマ、コンプレックスを隠しながら生きるのは辛い。しかし、それらがあることがいけないのではなく、周囲の心無い言葉や誤った情報により、その場に適応できなくなり、パニック障害やうつ病といった二次障害を起こすことが問題なのである。その経験を台無しとして捉えるのではなく、どう教訓にして前に進み、今を大事に生きるかが大切だ。そのためのひとつのきっかけとしてヒューマンライブラリーがある。(オルタナS特派員=高橋一彰)