6月26日京都大学で開催されたJolkona(ジョルコナ)共同設立者アドナン・マームッド氏の講演「あなたのなかにあるリーダーシップ:変革を生み出すためのはじめの一歩」が開催された。アドナン氏が講演の中で伝えたメッセージ、そしてそれを受け取った参加者である関西学院大学の佐藤美帆さんの想いに焦点をあてる。(文責・佐藤美帆)(編集・Jolkonaボランティア・スタッフ)

リーダーシップとは何か


社会起業家として、いわゆるいままでのメインストリームとは異なる道を歩むアドナン・マームッドさん。一体どういう動機が引き金となり、マイクロソフトを経てアメリカ国内でも注目されるクラウドファンディングNPO Jolkonaの立ち上げにいたったのか、彼の勇気=はじめの一歩のきっかけを聞きに、いざ京都の講演へ!

当日のお話の内容:
■リーダーシップとはなんだろう?
■小さな一歩を踏み出したリーダーたちとは?
■日本の若きリーダーたち
■はじめの一歩
■僕の場合

<<リーダーシップに不可欠な3つの要素>>
まず、アドナンさんから「リーダーシップってなんだと思います?」とオーディエンスに質問。
「他の人よりリスクをとること?」「周りの人を巻き込むことができる人がリーダー?」オーディエンスからはちらほらこんな返答。アドナンさんは、米国大統領のアイゼンハワーの言葉を引用し、リーダーとはなにかについてお話を始めてくださいました。

アイゼンハワー曰く、”Leadership is the art of getting someone else to do something you want done because he wants to do it.”-リーダーシップとは、自分がしてほしいことを他人が、心からしたいと思うように仕向ける技術だ。

つまり、リーダーシップには次の要素が不可欠とのこと。
Leadership
■ Influence(影響力)
■Responsibility(責任)
■Persistent(粘り強さ)
では、このような要素を体現するリーダーたちとは、いったいどういった人たちなのでしょうか。

<<小さな一歩を踏み出した海外のリーダー>>
そこで、アドナンさんは、彼がクラウドファンディングのサイトであるJolkonaや、他の活動を通して知り得た若きリーダーたちの例を紹介してくれました。

アフリカのケニアで、ストリートチルドレンとしてくらしていたウィクリフ。アメリカから駐在員としてきていたビジネスパーソンから支援をえて、高等教育を うけたことをきっかけに、ストリートチルドレンの就学を支援する団体:Kitoを設立。

現在4人のスタッフを雇用し、ストリートチルドレンの生活を変えるために活動をしています。アメリカの青年テイラー。クリスマスのプレゼントを受け取るかわりに、家族に寄付のお願いをした彼は、Jolkonaを通して、アフガニスタンの少女に小学の寄付をしてもらいました。こうして、周りの人をうまく巻き込む影響力を発揮したテイラーは現在、UNの評価役として、インド行きの準備を進めています。

<<新たな1歩を踏み出した日本の若きリーダーたち>>
「世界中に、いままでとは少し異なるやり方で、また彼らなりの一歩を踏み出して、活動をしている若いリーダーたちがいます。もちろん、日本にもね!」というわけで、日本各地で、さまざまな分野で活躍されているリーダーたちのご紹介。

鈴木あゆみさん: NPO法や、税制改正など、市民活動に関わる制度づくりに取り組んでいる団体 シーズ・市民活動を支える制度をつくる会コミュニケーションディレクター。http://www.npoweb.jp/

西村勇也さん:対話を通してInnovationを生むことをめざす団体NPOミラツクの代表。震災以後は、若者を集めた対話の場、ユースコミュニティーリーダーダイアログを開催し、これからを担う世代がアイデアをシェアする場を作っておられます。http://emerging-future.org/

清水健佑さん:ユースを集めたダイアログのファシリテーターをつとめるなどして、新しい日本、東北の未来づくりを担う宮城県気仙沼出身、慶応大学生。お父様は、帆布小物を製造、販売する株式会社GANBAARE!の代表取締役。http://www.ganbaare.jp/

日本での講演の様子


<<はじめの一歩を踏み出すために>>
「こんな感じで、もう既にあなたたちとそう年のはなれていない若い人たちが、リーダーシップを発揮しています。彼らの存在を思うと、きっとみなさんも、励まされたり、おもわず微笑みたくなる気持ちになるのではないでしょうか。しかし、一方であなた方の中には、焦りを覚える人もいるのではないでしょうか?だからといって、彼らにできていることがあなた方にできない、ということはないはずです。まずはこんなことからはじめるのはどうでしょうか?」

■ Learn about your self:自分のことを知ること。これが一番大事であり、一番時間がかかるし、かけるべきこと。
■Find your passion:自分の情熱がどこに向いているのかを知ること
■Form a supportive group:仲間をつくろう!互いに挑み合おう!定期的に彼らに会うことで情熱は保たれるし、また自分とは少し異なる視点をいれることができます。
■Connect with role model:自分と同じような情熱をもるロールモデルと、少なくとも月2回直接合う事で、想いを燃やし続けることができるでしょう。
■Dedicate to learning :リーダーシップは学びと深い関係にあります。学び続けることを忘れないように。

<<マイクロソフトからJolkonaへ>>
「ここまで、僕が今まで出会ってきた、さまざまな若いリーダーたちの話をさせてもらいました。ここで、もうひとりのお話をします。バングラデシュでうまれて、アメリカで教育をうけ、民間企業の出世のはしごを上るのではなく、心から解決すべきと感じる問題へのはしごを上ることに決めた一人の話です。それは僕の話です。僕はバングラデシュで生まれました。僕は幸運にも、アメリカで高等教育を受ける機会に恵まれました。コンピュータサイエンスの修士号をとったのちに、世界でも最も規模が大きく、頭のいい人たちが集まる会社に入社しました。マイクソフトです。そのなかで、出世というはしごのトップを目指して、上り詰めようとしていました。

そんな中、今から8年前、僕は生まれ故郷であるバングラデシュで、ある出会いをします。僕の人生を変え、今すぐなにかをおこさないといけないと思わせる出会いでした。それは、幼い子供の亡がらを葬ることもできずに呆然とする、ある父親の姿でした。バングラデシュから帰国した後も、その光景があたまから離れず、ずっとそのことを考え続けさせられました。それがきっかけとなり、僕はマイクロソフトにつとめながら、Jolkona(一滴のしずく)というクラウドファンディングのNPOを、設立しました。正直いって、マイクロソフトというトップ企業でフルタイムの仕事を8時間したのち、帰宅し食事をして、Jolkonaのためにもう8時間働く、という日々はどうかしていたと思います。しかし、そうさせるほどのなにかを、バングラデシュで感じたということです。

社会は僕たちに、ある特定の道、決められたレール上を歩むようにいいます。しかし、僕たちが理解しなければならないのは、それが唯一の道ではない、ということです。そして、なにかをかえるのに、何かを待ってはいられないという状況であるということです。僕たちの世代はターニングポイントに成りうるのではないでしょうか。僕は、ここにいるみなさんひとりひとりが、社会を変える僕らの世代の一人として後世に名を残すことを、強くねがっています」

<<講演を聞いての想い、「リーダーシップの源泉は自分の感情の中にある」>>
この講演会で、アドナンさんからの一番強いメッセージとして感じたことは、「はたして、リーダーシップや社会変革は、限られた特別な人だけに主導することが可能な特別なものではない。では、あなたがたはどうする?」ということでした。彼自身、彼の母国での衝撃に基づいてがむしゃらに活動してきた結果、社会にインパクトを与える存在になりました。つまり、自分のなかに起こる小さな感情をないがしろにしないこと、それが私達のなかにあるリーダーシップを発揮する第1歩なのかもしれません。

「リーダーシップは、特別な人のためのものではなく、あなたのものであり、私のものです」