野村総合研究所(NRI)は12日、グローバル時代の働き方をテーマに、若者と一緒に未来を考えるシンポジウム「NRI未来創発キャンパス」を開催した。会場には、200人を超える大学生・大学院生が集まった。NRI香港の澤井啓義社長は、「海外で仕事をするには、異文化の中で相手が考えていることを想像する力が必要だ」と語った。

トークセッションで学生からの意見に答えるNRI香港の澤井社長(左)とNRIの河野愛氏(中)、安増拓見氏(右)


シンポジウムの冒頭、同社コンサルティング事業本部グローバル事業企画室の小野尚室長は、日本企業の経常利益額に占める海外現地法人の利益額の割合が現在では25%以上を占めているとして、日本企業のグローバル化が進んでいる現状を説明した。

小野室長は、「市場開拓のため、ASEANなど新興国に進出していく企業が増えている。これからは、海外市場に積極的に投資を行う一方で、国内ではますますコスト削減していくだろう」と話す。

グローバル人材に求められる要素を話す小野室長


グローバル時代に求められる能力は、「異文化コミュニケーション力」だと言う。

「一度経営者の立場になって考えてみてほしい。海外展開するなら、現地の人を雇用した方が現地の事業をしやすい。海外支店が増えていく中、日本人に求められるものの一つは、文化が異なる人たちをマネジメントする能力だ。マネジメント能力を付けるためにも、コミュニケーション力が重要になってくる」

■ 「人生は、経験が全て」

1995年からNRI香港で製造業や商社向け業務システムの構築に携わってきた澤井社長は、海外展開するうえで「スピードと品質のバランス」が重要だとする。

「スピードと品質は相反すると思われるが、プロフェッショナルは両方を兼ね備えなければいけない。制約条件の中でクライアントと共に、いかに現地事情に合ったベストプラクティスを実現するかを想像し工夫する、ゲームのようなもの」と話した。

NRI香港は、アジア11カ国100拠点以上にサービスを展開しているが、澤井社長も初めはコミュニケーションで苦労したとも語る。

「英語の学習能力だけ高くても、伝える技術がないと伝わらなかった。英語の勉強も大切だが、相手に通じる英語を話すためには、文化もバックグラウンドも異なる相手が考えていることを想像する力が必要だった」

さらに「人生は、出会いや達成感などの経験が全て。ITで情報を得られるようになった今こそ、Face to Faceが重要。比較的時間がある学生のうちに、積極的に海外に行ってほしい。海外で刺激を受けて、物事を経験で語れる人になってほしい」と続けた。

■ 仕事場以外のコミュニケーションを

シンポジウム後半には、同社金融コンサルティング部主任コンサルタントの河野愛氏と同社流通・情報通信ソリューション事業本部主任システムエンジニアの安増拓見氏の2人も加わり、学生たちとのトークセッションが繰り広げられた。

登壇者からの質問に、青(はい)か白(いいえ)で答える学生たち


参加した学生から「外国人と仕事をするために、上手くコミュニケーションを取る方法は」と質問が挙がると、澤井社長は「仕事の場だけで、相手の文化まで理解することは難しい。仕事を離れて一緒に食事をするなど、むしろ日常の時間に相手との理解が深まる」と話した。

大手小売業向けに、海外の法律やニーズに合わせたシステム開発を行ってきた安増氏も、「海外出張のとき、平日にとんぼ返りするのではなく、土日も現地で過ごしてみることで異文化をより深く知ることができた」とした。

さらに、「海外で100%のパフォーマンスを発揮する方法は」という質問も挙がった。

入社以来、東南アジアを中心に10カ国以上を仕事で訪れた河野氏は、「アウェイの海外において、自分だけの力で100%のパフォーマンスを発揮することは難しい。事前準備をしっかりと行い、現地パートナーが得意な分野は役割分担して、明確な目標を定めて働くことが重要」と話した。

小野室長は、将来海外で働きたい学生に向けて「海外では、日本で常識といわれる価値観で、物事を判断してはいけない。常に変わりゆく価値観に、柔軟に対応できるようになってほしい」と呼び掛けた。

シンポジウムの模様は17日以降、ユーストリームで配信される。詳細は公式サイトで。(オルタナS副編集長=池田真隆)


NRI未来創発キャンパス