3.11震災から1年半が過ぎ、世間は「原発をどうするか」の議論ばかりかまびすしく、震災復興の話題はゆるやかに忘れられつつある。
いま、被災地の声は「○○してほしい」ではなく、とにかく「忘れないでほしい」が第一声となってきている。
いっぽう、震災関連の報道が減るに連れ、支援活動したいと思っていた人々も、次第にとっかかりを失い、被災地と縁遠くなってしまう、という現状もあるようだ。
「とにかく被災地に来てほしい、忘れないでほしい」という被災者側と、「何をどうしたらいいかわからない」という支援側のミスマッチ。その溝を埋めるひとつの架け橋として「ビヨンドXプロジェクト」の活動は始まった。
前国会議員で弁護士の早川忠孝氏の呼び掛けで集まったのは、現役大学生から専業主婦、70代のリタイア組など、実にバラエティー豊か、かつとりとめのないメンバーだ。
彼らは何かのプロ集団でもボランティア経験者でもなく、ただ「何かしたい」という思いでまとまっただけの有志たち。よって被災地で具体的な支援をするわけではなく、早川氏の号令のもと、とにかく「被災地に行く」ことのみを目的とした視察ツアーを始めた。
早川氏いわく「震災を風化させないボランティア」。だがそれが意外にも、冒頭の「忘れないでほしい」という被災地側の思いとマッチ。結果としてビヨンドXプロジェクトは、多くのボランティア団体のハブ的存在として、活動はふくれあがっていった。発足後半年となる8月には、活動記録をまとめた単行本『震災から一年後の被災地レポート』を発表するに至った。
最近は活動内容も、震災復興支援の枠を飛び越え、救命医療の制度改革、日本水鉄砲協会の設立など、何でもありの様相を呈している。
同団体の事務局長であり、さまざまな企画の仕掛け人として幅広く活動中の安西直紀氏は、この現象をどう捉えているのか。「国籍、肩書き、学歴などは問いません。熱意と潜在能力のある若者に集結していただきたい」
9月はじめには、日本の大学生と中国の留学生、合わせて200人ほどが群馬県の水上温泉に集結して「超越国境プロジェクト」を開催。日中関係が緊迫する中での開催は、まさに「何でもありの架け橋」ビヨンドXプロジェクトの面目躍如かもしれない。
「日本の未来は、現在の我々自身が何を考え、そして行動するかにかかっています。周りや他人が何をしたかではなく、自分自身がこれだ!と感じたら全身全霊一路邁進!」と思いをぶちまける安西氏。
はじめは「何かしたい」という漠然とした思いで参加してみるのもいい。気がつけば、安西氏らの熱意にほだされ、未知のボランティア活動に没頭しているかもしれない。まずは、単行本に刻まれた熱い軌跡をたどってみてはいかがだろう。(オルタナS特派員=青木ポンチ)
●ビヨンドXプロジェクトのブログ http://ameblo.jp/tokitakuni/