教えたい人のためのイベント開催ウェブサイトStreet Academy(ストリートアカデミー)を運営するIntheStreet(インザストリート、東京・新宿)と、渋谷を拠点とする4つのシェアドスペースが10月30日、業務提携を行った。これにより、渋谷を中心に学びのカルチャーを発信するラーニング・コミュニティ「Street Academy SHIBUYA」の発足に合意した。IntheStreet代表の藤本崇氏に、サイトの目的と今後の展望について話を聞いた。

ストリートアカデミーのサイト


■「教えること」のハードル下げる

「多くの人は専門学校などに何十万も払って学びにいくより、もう少し身近な学びの場を欲している」と藤本氏は見る。資格取得や本格的な技術を身につけるには専門学校への通学が必要となるが、興味本意で自分に合うか合わないかの進路判断であれば、入学金を必要とする学校や教室は敷居が高くなる。

学校や教室以外の学びの選択肢を作るには、まず教える人が増えなければ実現はされない。藤本氏が独自で実施した、20代・30代のスマートフォンを持つ男女を対象にしたアンケートによると、65%が「他人に教えるべきと言われたこと、あるいは自分で教えられるのではないかと思うスキル」を「持っている」と答えた。

しかしその中で実際に教えている人は、たったの15%であった。残りの50%の教えていない人たちに理由を聞いたところ、「集客ができない」「時間と場所がない」という答えが多かったという。

教えたいと思いながらも、「教えること」のハードルが高すぎて足踏みしている人が多く存在しているのだ。このハードルを下げることこそが、藤本氏の狙いである。

■「教えたい」個人を支援

今年8月に開設されたサイト「Street Academy(ストリートアカデミー)」では、「教えたいけど教えたことがない個人」が、次々と講師デビューを果たしている。「運営が全部この中でできるので、リスクが凄く少ない」と、藤本氏は言う。

サイトを利用することで、実際に教える以外の雑務が軽減されるという。予約やキャンセルも、生徒自らがサイトを通じて行うため、連絡などで時間を割く必要もない。

サイトの会員となりクラスページを作成すると、そこには予約ボタン以外に「いつか受けてみたい」というボタンがある。そのクラスに興味を持った人がそのボタンを押すことで、自分のクラスに興味を持っている人の数を知ることができ、それが大きな励みとなるそうだ。

実際に教えた後は、実績が貯まっていく仕組みとなっている。そのクラスが今までに何回開催されて、何人が参加して、どんな感想を上げているのか。それらが全て可視化されるのだ。これがこのサイトの面白いところである。

教えたことがない個人でも、回を重ねることで実績を蓄積していくことができる。学ぶ人にとっても、相手の実績と口コミが見えるのは大きなメリットだ。「メディア力がなくても、教え方が上手な人や良い先生はいる」と、藤本氏は言う。

■教える場所について

サイトにクラスを掲載することで、集客の不安は軽減され、連絡などの雑務からも解放される。次に場所選びについてだが、個人で教えるとなると、自宅かカフェ、または会議室を借りるという選択肢があるが、実際に何人が来るかわからない中で決めるのは、リスクが大きい。

20人が入る会議室を借りても、予約者数が到達しなかった場合は大きな負担となってしまう。そこで今回、業務提携をしたシェアドスペースの4施設では、人数単位×2時間というプランを用意している。このサイトを通じて予約すると、教えるのに適したレートを用意してもらえる。

4施設とは、「beez」、「Connecting the Dots」、「カナエル」、「マトメカフェ」である。東京都心にあるこれらのスペースは、電源もありWiFiも飛んでいるため、プレゼンももちろん可能だ。

ストリートアカデミーを運営するインザストリート代表の藤本崇氏


■狙うアジア展開

「地方からも使わせてくれという問い合わせがくるが、今はあえて東京限定にしている」と、藤本氏はいう。開設から2か月半、今後は少しずつ場所を展開していく予定だ。「このサイトの目的は地方にある」と藤本氏がいうのは、東京にはすでに多くの選択肢があるからだ。

地方の人がわざわざ東京に出てこなくても、自分の町で教えたい人と教わりたい人が交わる、ローカルなコミュニティを作っていくことが、このサイトの目的である。

今後の目標を尋ねたところ、「アジアにいきたい」と即答した。「すでに教育×ITが浸透しているアメリカではなく、村で誰かが教えだして、そこからカメラマンなどが生まれる、そんな世界に行くことに価値があると思っている」と、藤本氏は語った。

目標は一年後。「夢は大きく持たないと」と笑う藤本氏。Street Academy(ストリートアカデミー)の今後が、楽しみである。(オルタナS編集部員=大森清香)


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