日本で20人に1人いるといわれるLGBT。同性愛者や性同一性障がい者などの性的マイノリティーを指す。そんな彼らの視点からは、社会はどう見えているのだろうか。3組のLGBTカップルに集まってもらい、「二人の関係」を中心に話を伺った前編に続き、「周りの人々との関係」を話してもらった。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆、オルタナS編集部員=藥師実芳)



集まってもらったカップルたち。
・ はやと(22):FTMパンセクシュアル(身体の性別は女性。心の性別は男性。恋愛対象の性別は問わない)
・ あやめ(22):異性愛の女性(身体の性別は女性。心の性別は女性。恋愛対象は男性)

・ささ(21):Xジェンダー/パンセクシュアル(身体の性別は女性。心の性別は無し。恋愛対象の性別は問わない)
・りょう(非公開):MTFパンセクシュアル(身体の性別は男性。心の性別は女性。恋愛対象の性別は問わない)

・たけし(30):ゲイ(身体の性別は男性。心の性別は男性。恋愛対象は男性)
・たくや(20):ゲイ(身体の性別は男性。心の性別は男性。恋愛対象は男性)


自分のセクシュアリティやパートナーがいること、周りにカミングアウトしてる?その時の心境や周りの反応を教えて下さい。

はやと:(セクシュアリティを)親に言うときが一番ためらったかな。家族にカミングアウトしたのは、高校の卒業式の前。自分がFTMであることや、卒業式にはメンズスーツで行くことを手紙に書いた。

手紙を置いて、バイトのため家を出たけど、帰ってきてからは、自分自身もテンパっていることもあって、いつもの家なのに、違和感があった。母親とは、それから3日間は家で顔を合せなかったし、祖父母はなかったことにしようと、変に話しかけてきた。あとから聞いた話なのだけど、親はその3日の間に色々な人に相談していたらしい。

あやめ:はやとと付き合っていることは、今後一切付き合わなくてもよさそうな人には言ってます。ただ、結果的に話したことで離れていった友達はいなくて、今も仲良くしてくれています。

今後も必ず付き合いがある人には、言いたいのですが嫌われたり軽蔑されたりするのが怖くて、まだ言えてないです。特に一番言いづらいのは……親かな、いつか言わなきゃいけないとは思っています。

ささ:りょうと付き合っていることは、親にはまだ言っていません。ごくわずかな友達にしか伝えていません。

自分は必ずしも男の人を好きになるわけではないし、今付き合っている人も男の人ではないと言っていますが、結局伝わっていません。やはり、彼氏の扱いを受けてしまいます。はがゆいけど、訂正するのが面倒くさくなったりします。

りょう:自分のセクシュアリティを話している人には言っています。親にも言っています。でも、自分のセクシュアリティの話をしていない人には「彼女がいる」と伝えています。

カミングアウトをした友達に恋愛相談をしているのに「そこは男なんだから」と言われると意味ないなぁと思うときもありますね。

だから、カミングアウトする人は選んでいます。カミングアウトして、縁切られたら確かに悲しいけど、今後も付き合っていきたいと思う人には言います。

たくや:自分のセクシュアリティを言うことと恋人がいることを言うことは、必ずしもセットというわけではありませんが、ぼくの場合、仲のいい友達や両親などカミングアウトをしている人には、恋人のことも話しています。なかには、「彼氏」を「彼女」に置き換えて話すゲイの方もいますが、ぼくはそういう言い方をしたことはないです。



カミングアウトの「怖さ」について

たけし:親、身内、兄弟、友達にも言っていません。縁が切れるのが怖いのです。たぶん、これからも言えないと思っています。言える日が来るとは思えないです。

何かが変わるのが怖いから言えないのだと思っています。言えるなら言いたいですが、言ったからといって必ずしも認められるとは限らないと思っているので言わないと思いますね。

ある意味、カミングアウトは賭けではないかと思っています。嫌われるか、理解してもらえるか。そのリスクを日常に負う事はつらいので、だったら、不便だけど、今のままでいたいですね。

もちろん、言えないことのもどかしさは感じています。彼氏がいることを言えないことは、彼に対しても失礼になるので。でも、言えたら楽になるとは思います。

異性愛の人が言わなくてもいいことを、こちら(セクシュアルマイノリティ)ばかりがわざわざ言わなくてはいけないことには、嫌気が差します。それに対しての理不尽さはなくならないですね。ただ、セクシュアリティは自分のなかでも大事な要素だと思っていますので、自分にとっての大切な人には知ってほしいです。

パートナーがいてくれることで変わったことってある?

りょう:今までは、自分の話をするときには葛藤がありました。縁切られたときの、後ろ盾がないから、怖かったです。でも、付き合ってからは言い易くなりましたね。カミングアウトして傷ついても、理解してくれる人がいると思えると楽になりますので。

はやと:確かに、パートナーがいれば世界中が敵になることはないと思った。少なくとも味方が一人いると思える。


対談後記(座談会企画者・オルタナS編集部員=藥師実芳)

「LGBTカップルってあったことある?」と聞くと「ないなあ」と答える人が多いけれど、LGBTは日本国内に20人に1人もいるのだからあなたの周りの友達にも必ずいるはず。

でも、周りとの関係が崩れるのを恐れ、周りに言えない・言っていない人も多いのが現状だ。
だからこそLGBTカップルが周りにいることが「普通」であることを知った上で、何気なく使う言葉の選び方を少し変えてみてほしい。

例えば「彼女or彼氏いるの?」と聞くよりも、「パートナーいるの?」って聞くだけで、LGBTの人にとっては、ぐっとコミュニケーションが楽になり、「あ、この人になら話せるかも」と思ったりもするのです。


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