千葉県船橋市で、地域コミュニティーを構成するために一役買っている図書館がある。NPOが運営する民間図書館だ。運営はすべてボランティアスタッフが行い、蔵書は一般家庭からの寄贈で成り立っている。本を読むためだけではなく、人と触れ合いを求めに高齢者らが訪れに来る。(オルタナS副編集長=池田真隆)
民間図書館を運営するのは、NPO法人情報ステーション(千葉県・船橋市)。現在、船橋市を中心に23館あり、ボランティアスタッフの数は530人に及ぶ。誰でも無料で利用ができ、1人2冊までなら最大で2週間の間借りることができる。囲碁教室や編み物教室なども開かれ、本を探しに来る人以外にも、民間図書館を「居場所」として、人との触れ合いを求めに来る人がいる。情報ステーションの岡直樹代表は、「家庭や職場で安らぎや楽しみを見出せなくなった人の疲れた心をちょっと癒せるのが民間図書館です」と話す。
しかし、岡代表はほぼ毎日訪れる高齢者や学生たちを見ると、孤独感も感じるという。「毎日のように通ってくださる高齢者の方を見ると、ここが無ければどうしていたのだろうと不安になります。そして、大人に囲まれ、誰と話すでもないのに、いつも来てくれる学生たちを見ると、学校に友達がいるのか心配になります」(岡代表)。
一見普通に暮らしているように見える人でも、孤独感や不安感を抱えている。岡代表は、「ぼくは彼らに何もしてあげる事ができません。しかし、図書館は彼らが来たい時、戻りたい時にいつでも受け入れます」と話す。
近年、孤立無業者とされる「SNEP(スネップ)」が社会的問題とされている。スネップとは、Solitary Non-Employed Personsの略称で、20~59歳で在学していなく、無職、未婚者、友人がいない人のことを指す。2001年には80万人だったが、東京大学の調査では2011年時点は162万人に増えていたことが発表された。
20年続く不況で非正規雇用者が増え、経済格差も生まれた。こうした社会状況で「子どもの貧困」も悪化している。子どもの貧困とは、「子どもが経済的困難と社会生活に必要なものの欠乏状態におかれ、発達の諸段階における様々な機会が奪われた結果、人生全体に影響を与えるほどの不利を負っていること」と、子どもたちの学習支援を行う全国学習会ネットワークJLSN代表の犬飼公一さんは定義する。
2009年の厚生労働省のデータによると、17歳以下の7人に1人にあたる15.7%が貧困状態にある。保険料が払えないために無保険の子どもや、給食費、修学旅行費の未納・滞納も続出している。
国の教育機関に対する支出も低い。経済協力開発機構(OECD)がまとめた報告書「図表でみる教育2012」では、国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合は3.6%(09年)で、加盟している31カ国中最下位であり、3年連続の不名誉な結果となった。