太陽の光を浴びた辺り一面は黄金色に覆われる

 


岩手県陸前高田市広田町をご存知でしょうか?海に突き出した半島の先に位置する町である。この町に住むある女性はこう話す。


「広田は半島なので、海に突き出している。だから1番先に太陽が昇る。太陽が昇るときには、海が黄金色に輝くんだよ、すごくね。黄金に輝くから、あーここは黄金郷だなと思って、小学生のうちから過してきた」


黄金色に輝く広田湾は、先の東日本大震災で壊滅的な被害を受けた。太平洋に突き出した広田半島に点在していた漁村は、300軒がなくなり、50人が命を落とし、150隻あった漁船もほとんどがなくなった。


人口4000人で高齢化率も進む広田町を、震災当初から支援する支援団体がいる。復興支援団体SETである。震災から2日目に都内に住む数人の学生が集まり結成された。


現地でのボランティア以外にも、大学生など若者を対象にした復興支援啓発イベントを都内で開催し、大学の長期休暇期間には、広田町を訪れる現地入プロジェクトも主催し、200人以上を動員している。現地入プロジェクトでは、津波でこなごなになった漁船の破片が散らばる広田湾の砂浜の清掃活動なども行い、素足でも砂浜を歩けるようになった。


現在では、同団体の共同発起人である三井俊介さん(24)をはじめ、3人が広田町に住み込み、復興支援活動を継続して行っている。


ある日、三井さんは、砂浜から上がる夕日を見て、思わず目を奪われた。しかし、地元の漁師からは、「お前はまだ何もわかってはいない。本当はもっときれいなのだ。広田の海は夕陽の光で黄金色に染まるのだ。それなのに、震災で海も山もグシャグシャになってしまった。おれが生きている間に、絶対にもう一度その景色を復活させてやる」


ウニやタコなど海の幸がたくさん眠る広田湾を黄金に照らす瞬間は、後世に残したいエシカル百景の一つである。(オルタナS副編集長=池田真隆)


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