重本さんは「まちくさに名前をつけ、本を製作する過程から、子どもがもつ想像力の豊かさが見えた。『自分たちの身近にある世界が、こんなにもキラキラと輝いていて素晴らしい』と子どもの想像の世界が語りかけてくるようだった」と話した。

ワークショップを企画、運営したのは、同法人によるアートマネジメント分野の人材育成プログラム「10±10(テン・プラスマイナス・テン)」に参加する大学生や社会人6人。昨年11月から約3カ月間、教育論や広報の専門家のもと、安全対策など、子ども向けワークショップを運営する際の注意点や活動を発信する方法などを学んできた。

この取り組みの背景には、アーティストと学校の教師の連携による芸術表現のワークショップを2010年に文部科学省が始めたことがある。国際化が進むなか、子どもたちは今後、多様な価値観を持つ人々とともに、答えのない課題に取り組むことが求められ、創造力や表現力が必要とされると同省はみている。

このようなワークショップを行うためには、文化の「送り手」のアーティストと「受け手」の子どもや教育現場、地域をつなぎ、芸術表現活動をサポートするアートマネジメント分野の専門家が必要だ。

しかし現場はつなぎ手の専門家が不足している。アートマネジメントを大学で専攻しても、この分野で安定した収入を得ることは難しく、仕事にできる人は限られている。

さらに関西は、東京と比べてアートビジネスが発達していないため人材が育ちにくい。そのためアーティストが創作の時間を削って、芸術表現活動のマネジメントに関わっているのが現状という。

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