2012年9月25日、平城宮跡中心部の造成工事が始まった。平城宮跡には1998年に復元された朱雀門や2010年に完成した第一次大極殿がある。そのほぼ真ん中にある東京ドーム1つ分、45000平方㍍もの草原・湿地を、土とセメントで舗装するというのだ。
この舗装事業に反対し、「平城宮跡を守る会」(奈良市)が署名活動など反対運動で立ちあがった。この会の事務局、ならまち通信社(奈良市)の松永洋介さん(41)は「今回の埋め立て・舗装によって、区域の動植物の全滅が明白であるばかりでなく、 平城宮跡全体として一体化していた生態系が大きく乱されることは必至」と話す。
最大の懸念は、地下水の枯渇による埋蔵文化財の破壊だ。地下水によって1300年間守られてきた木簡などの遺物が、酸化・腐敗の危険にさらされることだという。また、「文化庁も、ユネスコ世界遺産委員会に工事の報告をしていません。このままでは、平城宮跡は世界遺産から登録抹消される可能性もあります」と工事の問題点を指摘した。
6年前、東京から奈良に移住した松永さんは、奈良の町の身近な情報を発信する個人運営のボランティア団体、ならまち通信社で取材活動などを取り組む。そんな生活のさなか、平城宮跡の工事は突然の出来事だった。
■署名出したが、話し合いは決裂