2017年6月末の調査によると、日本に在留する外国人の数は240万人を突破。日本に住みながら、日本以外の国にルーツを持つ子どもは日本国内に183万人いるといわれています。さらにこのうちの1万人の子どもは、家庭での会話が日本語でなかったり、幼少期を海外で過ごしていたりしたため日本語が分からないまま、支援もなく苦境に立たされているといいます。ICTを使って、日本語を学ぶ機会のない子どもたちに「日本語教育」を届けたい――。日本語のオンラインスクールを運営するNPOを紹介します。(JAMMIN=山本 めぐみ)

■外国にルーツを持つ子どもたちに日本語授業を提供

福生「YSCグローバル・スクール」のスクール。10か国以上の国にルーツを持つ子ども・若者が共に学ぶ

東京・福生市を拠点に活動するNPO法人青少年自立援助センター・定住外国人子弟支援事業部。外国にルーツを持つ子どもと若者の日本での暮らしを支えたいと、日本語教育や学習支援を行う「YSCグローバル・スクール」を運営しています。

事業を取り仕切るのは、田中宝紀(たなか・いき)さん(38)。自身も高校生の頃にフィリピンへの留学経験があり、言葉の壁を感じる中でもたくさんの人が気にかけてくれ、孤独を感じずに済んだことが活動の原点だと語ります。

「YSCグローバル・スクール」の田中宝紀さん

その「YSCグローバル・スクール」が取り組んでいるのが、外国にルーツを持つ子どもたちに、オンラインによる日本語教育を提供する「NICO(ニコ) にほんご×こどもプロジェクト(NICOプロジェクト)」。

受講生の年齢は幅広く、通所支援を含め6歳から30代まで、これまで26カ国・500人以上の若者をサポートしてきました。

■基礎語力、中途退学や不登校の予防にも

「NICOプロジェクト」の仕組み

言葉の壁は、学校生活で大きなネックになります。日本語が分からない子どもたちが授業についていけないのはおろか、周囲の人たちとのコミュニケーションもとれない状況は、子どもの中途退学や不登校の原因にもなりかねません。

「日本語を理解できるようになると、学校生活が楽しめるようになり、本人の負担が減る。また同時に、学校側の負担も減らすことができる」と田中さん。「NICOプロジェクト」の授業では、短期集中的に日本語の基礎力をぐっとレベルアップさせるようなカリキュラムを用意しています。

東京都福生市にあるスクールで学ぶ生徒たち。パソコンの画面(画面中央右側)には、遠方からオンラインで参加する子どもの姿が。同じ境遇に置かれた「仲間」として、画面越しに交流を深める

オンライン授業を通じ、生徒たちが「つながる」ことも一つの重要な要素だといいます。

「『オンライン授業』というと、動画を視聴するなど一方的なイメージが強いが、私たちの教室では、たとえ遠くの場所に住んでいても、同じ顔ぶれの生徒たちが毎日オンラインで顔を合わせ、一緒に会話を練習するなどのやりとりがある。こういった触れ合いを通じて、言葉の壁から日本の学校では孤立しがちな彼らが、居場所を感じてくれたら」と田中さんは話します。

■自治体ごとの外国人への「サポート格差」

福生にあるスクールへ通学して学ぶ生徒と、オンラインで学ぶ生徒が初めてリアルで対面した時の一コマ。強い絆で結ばれた「クラスメイト」だ

日本国内でも外国人が多く集まる地域は、自治体による支援が他の地域と比べて手厚い傾向にあるといいます。こういった地域はすでに外国人コミュニティーが存在しており、初来日した人たちも情報を得やすく、必要なサポートが受けやすい環境にあります。

しかし問題は、こういったサポートが身近に得られない場合だと田中さんは指摘します。

「外国人が周りにいない地域へ来日したような場合、言葉の壁から孤立が生まれてしまう。文部科学省の調査では、全国の1万人の外国をルーツに持つ子どもたちが、日本語がわからないまま何の支援も得られていない状況にある」といいます。「NICOプロジェクト」で、オンラインを通じ、この1万人の子どもたちに日本語教育の機会を提供したい、と田中さんは語ります。

■「言葉の壁」が生む課題

福生のスクールにて、休み時間に、カードゲームをする生徒たち。国籍も母語も肌の色の違いも軽々と超える

言葉の壁は、子どもたちの未来にも影響を与えます。日本人の高校への進学率が98%であるのに対し、日本に暮らす外国ルーツの子どもたちの高校進学率は50〜60%。支援が充実している自治体ですら、80〜90%にとどまると田中さんは指摘します。

「たとえば10歳を超えて日本に来た場合、日本語教育の支援が入ったとしても、日常の意思疎通ができる程度までのレベルになるには1〜2年が必要。さらに、学校の日本語の授業についていけるレベルになるまでには、5〜6年かかると言われている。言葉の壁がどうこうという以前に、人間として基礎学力を得る機会すら失われてしまう」と訴えます。

進学を諦めてしまった場合、就労と離職を繰り返すケースが多く、「貧困」の課題も出てくると田中さん。

「共に生活をしていく以上には、彼らにも視点をあわせ、必要な配慮をしていく必要がある。外国人の人たちを呼び寄せ、就労やそのための教育だけを支援するのではなく、それこそゆりかごから墓場まで、彼らの人生を組み込んでいく覚悟が必要。子どもたちが義務教育の間に来日している場合は、その間に教育機会をしっかりと提供していくことが今後の日本社会にとっても重要」と語ります。

■日本語を学ぶ子どもたちをサポートできるチャリティーキャンペーン

授業で使用しているテキスト一式。年間100名の子どもたちを支援しているが、そのうち25〜30%は生活困窮世帯にあたり、経済的な理由からテキストの購入が難しいという

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、青少年自立援助センター「YSCグローバル・スクール」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。

集まったチャリティーは、生活困窮世帯の日本語を学ぶ子どもたちに、授業に必要なテキスト一式(教科書1冊、ワークブック2冊)を無償で届けるための資金になります。

10代〜30代の若者まで共通して使える様々なシーンを起用したこのテキストは、日本語だけでなく日本の生活に必要な知識を学ぶことができるのが特徴です。

「JAMMIN×青少年自立援助センター『YSCグローバル・スクール』」1週間限定のチャリティーデザイン(ベーシックTシャツのカラーは全8色。他にスウェットやパーカーなどあり)

JAMMINがデザインしたアイテムには、壁を突き破る「HELLO」の文字が描かれています。「思いと、それを伝える”言葉”があれば、立ちはだかる壁を乗り越えていくことができる」という「YSCグローバル・スクール」の思いを表現しました。

チャリティーアイテムの販売期間は、12月11日〜12月17日までの1週間。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは「YSCグローバル・スクール」の教室の様子や、田中さんの活動への思いを紹介しています。また、ペルーとフィリピンから来日した二人の生徒のインタビュー記事も公開中!ぜひチェックしてみてくださいね。

オンラインの日本語授業を通じ、日本に住む外国ルーツの子どもたちに教育の機会を〜青少年自立援助センター「YSCグローバル・スクール」

【INTERVIEW】言葉の壁を乗り越えて…「YSCグローバル・スクール」で学ぶ生徒にインタビュー!

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

【JAMMIN】
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