若者は読書をしないと言われる昨今であるが、子を持つ親の世代の皆さんは本を読んでいるだろうか。そして、その本の面白さを若者に伝えているだろうか。今回紹介する本は、今年4月に刊行された「ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム」(谷口忠大・文春新書)だ。本書は、立命館大学准教授の著者が考案した、書評ゲーム「ビブリオバトル」を紹介した一冊だ。

「読んでみたくなった本をみんなで勉強すればいいのではないか?」という単純な発想から「知的書評合戦 ビブリオバトル」が生まれた。

ビブリオバトルは2007年、京都大学大学院情報学研究科に研究員として着任していた著者が所属する研究室の輪読会を主催した時、「本を自由に選択できない」「レジュメ棒読み発表者による伝わりにくい独演会」などの輪読会の問題点に対し、「読んでみたくなった本を各自が持ち寄って勉強すればいいのではないか?」というシンプルな発想から生まれた。

ビブリオバトルは、以下の4つの原則が公式ルールとされている。
⒈発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる。
⒉順番に一人5分間で本を紹介する。
⒊それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッション2〜3分行う。
⒋全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員で行う。最多票を集めたものを『チャンプ本』とする。

書評を紙媒体だけでなく、プレゼンテーションによって行うビブリオバトルには多くの可能性があるという。「参加者で本の内容を共有できる」「スピーチの訓練になる」「いい本が見つかる」「お互いの理解が深まる」など、ビブリオバトルを体験するだけで有益な効果をもたらすことが期待されるのだ。そして小説、学術書、マンガなどジャンルを問わず、自分で面白いと思った本を紹介できるのも魅力のひとつだ。

近年になって、ビブリオバトルは大学や図書館、カフェや居酒屋などあらゆる場所で開催されている。社員研修会や新人教育など、スキル向上のために企業がビブリオバトルを応用したり、プレゼンテーション能力向上のため、大学が授業にビブリオバトルを取り入れるなど、利用法は多種多様である。

2010年に猪瀬直樹都知事(当時は副知事)がリーダーを務める「『言葉の力』再生プロジェクト」の一環として、大学生大会の「ビブリオバトル首都決戦」が開催された。このイベントが盛況したのをきっかけに、ビブリオバトルは全国へ広がっていった。大学生大会は毎年開催される運びとなり、大学生・大学院生のための本の祭典として、定着していくことになるだろう。

スピーチ力、読書習慣を身につけたい人、いろいろな本や人に出会いたいなど、様々なニーズを持った人々に楽しんでもらえるゲームだ。自分の好きな本をビブリオバトルで紹介して、読書を更に楽しんでみてはいかがだろうか。(オルタナS特派員=高橋一彰)


知的書評合戦ビブリオバトル公式サイトはこちら
http://www.bibliobattle.jp/