横山さんは、2005年当時と比べて、日本人の年間に1回以上旅行する率を示した、「国内旅行実施率」が減少傾向にあるという。「インターネットにより情報が平準化している事に加え、都内には温泉施設もできて、広いリビングを持つマンションも出てきました。結果、観光地の宿泊施設や温泉の特別感といった都内と比較した優位性が薄れてきている事が背景にあるのではないのでしょうか。色々なものに時間とお金が分散されることで、国内旅行のプライオリティーが下がってきています」と話す。
2年連続で国内旅行実施率の3ポイント下落を経験した後、東日本大震災が起きた。更に実施率が落ちるものと思われたが、震災の翌年若干ではあるものの実施率が上がったのだ。震災があり、日本のために何かしたいと思う人が増えたのではないかと横山さんは分析する。
「東日本大震災の経験を通じて、東北の祭りや伝統工芸品、人の温かさなどが注目を浴びました。震災後、日本全体を見渡すと、若者を中心に地域に行く事、地域を知る事、地域の事を伝える事、その一連の行為自体が地域貢献じゃないか、といった認識に変わっていました」
訪れた観光地を選択した動機に関する調査では、若い人を中心に、有名な観光資源には興味を示さなくなり、そこでしか食べられないものや、できない体験をすることに関心が集まっていることが分かった。
若者の旅行事情を象徴した例として、以下の事例があるという。ある20代のカップルが京都旅行に行き、一番印象に残ったものとして挙げたことは、有名な観光スポットではなく、「一晩中よしもとチャンネルを観れたこと」と答えたそうだ。そのカップルは、京都に住む人々の日常を体験し、まるで関西人になった気分がしたという。このように、若者が旅行に求める非日常は、「贅沢」から「他人の日常生活」に変化しているのだ。
■魅力増す、理由のあるオンリー1