久志さんはここで、天然塩の製造販売から事業をスタートさせる。地方でソーシャルビジネスを行うためには、大量生産して、大量消費するスタイルではいけないと考える。「成熟しているマーケットなので、生産して消費するスタイルではなく、既存の資源やインフラを活用して、問題解決ができる仕組みにする」。

例えば、江戸時代からこの土地は塩造りが盛んで産業を形成していたのにも関わらず、戦後の法改正で誰も作らなくなっていた。20年前程から、趣味で塩作りをしているおじさんと一緒に彼が使っていた平釜を活用し、天然塩の製品化を実現する。また、自分たちの暮らしのおすそわけとして称して、農作業や天然塩の製造販売、島探索やウォーキングやサーフィン体験などを体験型観光事業としてスタート。

海は透明で底まで見える

その他にも長年使用されていなかったドライブインを改装してカフェにするなど、すべて基本的には、元々ある資源や素材を活用し、パッケージを作成し情報発信することで新しい価値に繋げている。

「多様性がないコミュニティーは衰退していく」と久志さん。ヒッピーコミュニティーを放浪し、多様性と持続性の関連に気付いたという。「串間のようなオルタナティブなコミュニティーは閉鎖的になってはいけない。多様な世代や、異なる価値観を持った人同士が混ざり合わなければいけない」。

多様性を受け入れないコミュニティーもあるが、久志さんは、「原因はコミュニティーではなく、社会制度そのものにある」と見る。

串間から見える未来

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