――おもしろ農業に携わることになった経緯は?

片桐:2009年、大学の同級生の宮治勇輔さんが、会社をやめて実家の養豚業を継がれ成功しただけでなく、農業分野を変える若手世代のための団体「農家のこせがれネットワーク」を立ち上げたことにはじまります。

その立ち上げパーティーで、おもしろ農業の代表を務めていた山村勝平さん(36)に出会い、大きな影響を受けました。当時、僕は百貨店を運営する会社の企画部に異動したころでしたが、4年間その仕事に関わる一方で、生産者の声をお客様へ届ける仕事にもっと関わりたいと思い始めていました。

職を離れる怖さもありましたが2011年9月に独立を決意しました。書道家でもある山村さんが活動拠点をアメリカに移すのを機に、おもしろ農業の後継者を募集していることを知り、2012年4月、おもしろ農業を引き継ぎました。日々変化する食品業界の状況に柔軟に対応し、農業への興味を持ってもらうイベントや企画を通して地域の農業や加工業の方と関われる、おもしろ農業の仕事に魅力を感じています。

――そもそも、なぜ農や食に関心があったのですか?

片桐:2005年2月ごろ、宮治さんの実家で育てた豚肉を使った、生産者と生活者をつなげるバーベキューイベントを神戸で開催しました。

そこに参加し、約50人が集まったことに驚いたからです。50人は少ないと思うかもしれませんが、僕は食に関心を持った人が50人も集まると思っていませんでした。一方で、百貨店の食品部に勤めていたころ、魚売り場へ買い物に来た50歳前後の女性から、サバをアジと勘違いして値段を聞かれたことに衝撃を受けました。

家で料理を作っているはずの年代の女性が魚の種類を見分けられないほど、現代は自分が口にする食品に興味のない人が多いことも事実であるのを実感しました。そして、食材の価値を伝えてくれる小売店や料理店への 「関心」や、生活者自らが選び抜く「目利き力」をもってもらうことが必要と考え始めました。

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