関東と関西の女子大学生が中心となり、若者に防災意識を呼びかける動きが起きている。コンセプトは、「おしゃれでわかりやすく」だ。防災意識の高い女子大学生から構成される「防災ガール」たちがウェブサイトでの情報発信やワークショップを通じて、楽しみながら災害に備える方法を伝授する。(オルタナS副編集長=池田真隆)

「防災ガール」を立ち上げた田中さん

この動きを起こしている人物は、社会人三年目の田中美咲さんだ。「防災は政治に似ている。すぐに効果がでないため、諦められやすいが、死ぬかもしれない確率を下げることができる唯一の方法」と話す。これから起きる可能性がある首都直下型地震や南海トラフ地震へも危機意識を強く持つ。

「若者に防災意識の大切さを伝えたい」という思いで、今年3月から有志メンバーを募集した。現在は社会人と学生合わせて約30人のボランティアスタッフが集まっている。

8月26日には、ウェブサイト「防災ガール」をリリースした。かわいくて持ち歩きやすい防災グッズや、防災関係者へのインタビュー記事、全国の防災ガールなどを紹介する。

執筆しているのは、防災ガールこと、防災意識の高い女子大学生たちだ。現時点で、防災ガールは関東と関西に5人いる。田中さんが出歩き面接を経て、認定した。彼女たちの大半が東日本大震災を契機に防災に目覚めた。なかでも、南海トラフの被害を強く受けると予測されている関西の女子大学生は危機意識が強いという。

防災に関する知識を得るために、大学教授や防災研究家などからレクチャーも受けている。情報発信だけでなく、若者向けにワークショップも行う。踊りやカードゲームを通して、防災意識を伝える。去年は、15人から60人規模のワークショップを10回実施した実績もある。

防災意識を持たない若者には、身近なことから始めてほしいと話す。「ヒールを1センチ下げるだけでも、走って逃げることができるし、防災関係のアプリをダウンロードしておくことでもいい」。普段から「健康な生活を心がけること」も「隣近所と仲良くすること」も防災になるという。

防災ガールの仕掛け人である田中さんは、防災意識を持ったのは東日本大震災がきっかけだという。震災時は、ITベンチャーへの内定が決まり、大学卒業間近だった。

入社したITベンチャーではソーシャルゲームのプロデューサーなどを務めた。もともとコーチングに興味があり、人の命にかかわる仕事がしたいと2年目で退職する。全米NLPコーチング協会認定マスターなどの資格を持ち、独立を考えていたところ、公益社団法人助けあいジャパンの佐藤尚之会長から声がかかる。

「まずはうちの団体で人の命にかかわる活動を経験し、それから独立してみたらどうか」と打診された。東日本大震災で防災意識も芽生えていたこともあり、助けあいジャパンに入ることを決めた。

現在は事務局として働く傍ら、「防災ガール」の活動も行う。田中さんは、「防災に関する情報は難しく、防災グッズはダサかった。これが若者に距離を与えていた。かわいくおしゃれに伝えて、防災を身近なものにできるきっかけを与えたい」と意気込む。

防災ガール
「防災ガール」クラウドファンディングに挑戦中のプロジェクト