全商品の9割にフォアトレードを導入している化粧品メーカー「ザ・ボディショップ」の福本剛史代表は、「フェアトレードはブランド価値を高めることにつながる」と断言する。しかし、購買動機にフェアトレードを置く人は多くない現実もある。購買動機にはならなくても、ブランド価値を高めるフェアトレードの力とは。(オルタナS副編集長=池田真隆)
「フェアトレードであることは、ブランド価値を高めることにつながっている」と話す根拠は、昨年、10代から60代の顧客へインターネット調査を実施したことで明らかになった。
だが、日本の国民性もあり、「フェアトレードだから購入するという顧客は多くはない」と言う。ザ・ボディショップ誕生の地イギリスは、エシカル発祥の地であり、フェアトレード文化が高い。国民の認知度も7割を超える。福本代表は、日本とイギリスを比較して、「自己完結型にこだわり過ぎている」と分析する。
「日本でフェアトレードを考える際、他者とのつながりよりも自己完結型の思考で終わる傾向にある。一方、イギリスでは、相手を思い浮かべながら、チームでフェアトレードを考えている気がする。この違いが、浸透率に現われているのでは」(福本代表)
しかし、ソーシャルの波は感じており、フェアトレードが浸透するのは時間の問題と見る。「若者を中心に利他の精神は確実に高まっている。アニータ・ロディックは創業時、動物実験反対を掲げたが、その声は多くの人に届かなかった。しかし、今ではどうだろうか。EUをはじめ国内の大手化粧品メーカーも動物実験の廃止に動いている。アニータの描いた世界に着実に近づいてきている。だから、フェアトレードの熱は必ず高まる」。
創業者アニータ・ロディックは「企業は社会課題を解決するためにある」という考えを持った英国人女性だ。貧困撲滅には「援助」ではなく、「正当な取引」の必要性を感じ、同社独自のコミュニティーフェアトレードを導入した。
貧困で苦しむコミュニティーと契約し、原料や雑貨を公正な価格で買い取る。1987年から開始し、現在では21カ国、25のサプライヤー、25000人の生産者と直接取引している。コミュニティーフェアトレード原料は全製品の90%に適用されている。
今年のクリスマス、このコミュニティが生産したチャリティーギフトを販売する。売上のうち3000万円を使い、インドやホンジュラスなど貧困やHIVで苦しむ5つの地域に学校をプレゼントする。新設された学校では、800人の子どもたちが教育を受けられることとなり、将来の収入や健康面での改善も期待される。
「Give Joy To Every Body」――これは、同社が掲げるクリスマスのモットーである。学校建設をはじめ教材や制服提供などの教育支援活動は、20年前から行っている。これまでに、6000人の子どもたちをサポートしてきた。
今年のキャンペーンは、日本を含む世界各国の店舗で協力して実施される。建設場所は、インド北部、インド南部、ネパール、ホンジュラス、ガーナの5つで、同社独自のプログラムであるコミュニティーフェアトレードのパートナーがいる地域だ。
販売するギフトの一つでオススメなのが、クリスマスカラーの赤をメインにした校舎型ボックスに、ジンジャーの香りがするボディバターや、クランベリーのシャワージェルなど4品が入っているものだ。ボックスをデザインしたのは、ネパールカトマンズで伝統的な手作り紙製品を作る女性職人たちだ。
福本代表は、「コミュニティフェアトレードが生産者に与える効果は2つある」と話す。「正当な資金の提供」と、「利他の精神」だ。「フェアトレードの考えが現地の生産者にも伝わり、倫理観を持った事業活動を生み出している」。
夏が終わり、ハロウィンの季節を過ぎれば、クリスマスの匂いもしだす時期になる。今年のクリスマス、誰かへの思いを伝えるために、購入してはいかがだろうか。10月中旬から発売で、一個3150円。