「志」と「企み」について語る田中有史氏

百貨店の直営店舗などでお米を販売する「菊太屋米穀店」では、まずパッケージをコミュニケーションメディアにするため、一年間に販売する50種類以上のお米のパッケージを一新し、キャッチフレーズを前面に打ち出した。

「月山の湧水で 清らかに育てた ガールズ農場米」「倉岳の山水と 愛情たっぷり 天日乾燥麻衣」など目に留まるキャッチコピーは、「これってどういうこと」と売り場を訪れる顧客との会話が自然に生まれ、商品の売り上げ増につながることを狙った企みだ。

同店のPR誌は、きれいに印刷された冊子ではなく、お米の袋に合うよう、わら半紙にモノクロで印刷された名刺サイズの「米本」で、お米の袋に紐でくくりつけて配られる。

お米のこだわりや食べ方、田んぼのことなど、近所にある話し好きの店主が世間話をしているかのような内容とそのイメージ通りの素朴な冊子は、計算されたデザインとコピーの力でメディアとしての発信力を高め、企み通りに「お米が好きなお米屋さん」という印象が積み上がっていく。

「企むということは奇をてらうのではなく、もっと本質的なことです。例えば、男の人が女の人を好きになるのも、いっぱいいる女の子の中から、他の人と違ってそこが好きだと感じる部分が必要で、人格みたいなものをきちっと出さなければ好きになれないんですよね。モノを買ってもらうのも、どこを好きになってほしいかというところを作らなければあかんのです。そのオリジナリティを継続して訴求していくことがブランディングなんです」

立ち止まり、会話が生まれるパッケージ

1 2 3 4