国際ガールズデーである10月11日、生産者と正当な雇用契約を結ぶエシカルファッションの今と未来について考察する座談会が行われた。エシカルファッションがメインストリームとなるために、大量生産消費型のファストファッションとのコラボレーションの必要性が話し合われた。しかし、児童労働や環境破壊の温床となっているブランドと組むことにはリスクもあり、利益と倫理の両立の難しさが浮かび上がる。(オルタナS副編集長=池田真隆)

登壇した星代表、2児の母親として、経営者として日々を過ごす

座談会は、ヴィーガニーが主催した「国際ガールズデーEVENT2013」の一環として開催された。登壇したのは、「アール・エシカルジュエリー」の星まり代表と、「フェリーズ」の柿本可奈子代表、「ヴィーガニー」のディレクター竹迫千晶さん、プランジャパンが展開する女の子の児童労働問題を解決する「Because I am a Girl」キャンペーンのコピーライターこやま淳子さんの4人だ。

ヴィーガニーの竹迫さん、エシカルファッションをセレクトしたECサイトは来年春にオープン

■「安い服」のカラクリ

「Tシャツ500円、ジーンズ1000円。全てとは言えないが、ほとんどの低価格商品の背景には、不当な労働を強いられている女の子たちがいる」と、竹迫さんは話す。コットン畑で働かされているのは、途上国の女の子が主流だ。学校にも通わせてもらえず、安価で長時間働かされている。

例えば、インドでは結婚にするにあたって、女性が持参金を用意する習慣がある。この持参金確保のため、貧しい州では、女の子たちは学校通いをあきらめ、綿花栽培に関わる。さらに、親の借金による貧困で、学校に通わせてもらえず働くケースもある。

2009年、国際NGO ACE(エース)は、インド全体で約40万人の児童が綿花栽培を行い、その半数以上が14歳未満で、7~8割が女子だと発表した。将来、稼ぎ手として期待されるのは、女の子よりも男の子だという偏見がある。女の子たちは、家事を終えて、朝9~10時ごろまで、30℃を超える劣悪な環境で働く。農薬による健康被害も多発している。

■エシカルファッションがメインストリームになるための条件

竹迫さんは、「全ての商品に『?』を持って商品を見てほしい」と話した。彼女は、2005年から大手広告代理店でコピーライターや企画プランナーを務めていたが、利益追求の事業のあり方に疑問を抱くようになる。インド人の夫と出会い、毛皮や革に使用される動物たちを保護する団体を支援するようになる。この支援活動を通じて、女性や子ども、動物たちの命を支援することにやりがいを見出し、エシカルセレクトショップ「VEGANIE(ヴィーガニー)」を設立した。2014年春、ECサイトをオープン予定だ。

「エシカルファッションをメインストリームにするためには、ファストファッションと対立し合うのではなく、コラボレーションしていかなくてはいけない」と竹迫さんは話す。世の中を変えるためには、一定の規模感がなくてはいけなく、大手企業との連携が必須条件だという。

近年、エシカルファッションブランドと大手企業のコラボレーション例としては、2011年5月25日のアフリカ・デーにちなんで行ったものがある。利益の一部をアフリカの飢餓撲滅や女性問題の解決に充ててきた米国LA発の「オムニピース」はユナイテッドアローズと組み、寄付付きTシャツを販売した。

さらに、ジュエリーブランドのハスナは、世界的漫画「ピーナッツ」の人気キャラクタースヌーピーとコラボした。今年10月12日から開催されているスヌーピー展に合わせて、限定ネックレスを販売した。

「エシカルファッションをメインストリームに」――このためには、デザイン、価格、質など、倫理的に製造されていることは前提として、商品力が求められる。エシカルな評価を抜きにして、商品そのものの魅力で、他の競合品と競い合わなくてはいけない。そのためには、有名キャラクターやデザイナー、セレブリティとのコラボも考えられる。

■看板を下ろし、考える

商品を倫理的かどうかで選ぶ人はどのくらいいるのだろうか。野村総合研究所のデータでは、「商品が同じ値段・機能なら社会貢献できる製品を購入する」と回答した人は60%となっているが、フェアトレードと児童労働では生産者に支払うコストに差が出て、そもそも「同じ値段」にすることは難しい。

朝日大学マーケティング研究所は2011年、「エコ」と「低価格」の購買選択基準を比較した。その結果は、「エコ」重視が約3割、「低価格」重視が約7割の配分だった。このように現実は、「倫理的かどうか」で購買を選択する人は少数である。

では、どのようにしてエシカルファッションを展開していけば魅力が伝わるのか。私は、「エシカル」という言葉を使わないことも一理あるかと考える。例えば、アサイードリンクを販売しているフルッタフルッタは、ブラジル・アマゾンの森林を再生する「アグロフォレストリー(森林農業)」で作っている。

同社の長澤誠代表は、「環境に良いから買ってくださいとは伝えていない。健康になるから飲んでくださいと伝えている」と話す。「エコだから買うのではなく、買ったものがエコになる仕組みをつくることが重要」。

さらに、全商品の3分の1に充たる約40万本にオーガニックコットンを使用しているリー・ジャパンでは、「販売時には、エシカルとは決して表に出さない。最初に押し付けるのではなく、購入後に気付いて勉強してもらう筋書きを作ることがメーカーの役割」(細川秀和取締役)とする。

このように、一度看板である「エシカル」を外して、他の言葉で置き換えてみると、独自のストーリーが出てくるかもしれない。エシカルファッションの生産現場にはストーリーがつまっている。子どもを連れてきたりすることもあれば、飼っている牛や馬を待機させておくこともあり、無機質な空気感はなく、ワイワイガヤガヤとした雰囲気があるという。

竹迫さんが運営するヴィーガニーはインドで生産しているが、生産者が作った商品を検証するチェックリストに、「カレーの染みが付いていないか」という項目もある。機械的に無機質に生産している現場ではあり得ない項目だ。しかし、それは、他にはなく、ユニークな強みとなるはずだ。

エシカルを押し出すために、あえてエシカルを伝えない方法に着目したい。生産者と正当な契約を結び、文化の異なるヒトと、笑い、ぶつかり、涙して成果物を作った過程にこそ、魅力が隠れている。