東日本大震災で被害を受けた宮城県石巻市と名取市の仮設住宅に住む女性たちのハンドメイドバッグが銀座三越で好評だ。11月20日から12月3日までの期間限定で出展しているのだが、すでに用意した40個が完売しそうだ。そのバッグは、全国の支援者が毛糸を使って編んだ素材を、作り手の女性たちがはぎ合わせて作る「つなぐバッグ」だ。(オルタナS副編集長=池田真隆)

「つなぐバッグ」を持つ作り手の女性。値段は一個6800円ほど

つなぐバッグが生まれた背景には、2人のアクティブな女性がいる。都内の企業で働く秋山エミさんと仙台在住のニットデザイナー錦小路ナンシーさんだ。

2人はボランティアとして、宮城県や岩手県を周っており、仮設住宅の集会所で行われた編み物教室で偶然出会った。女性たちの編み物技術の高さと、やりがいを見出している姿に着目し、商品化を決意、ボランティアとして任意団体「Kate&Co.(ケイトアンドコー)」を今年8月に立ち上げた。

作り手は石巻市と名取市の仮設住宅に住む60~70代を中心に女性8人。最高齢は85歳だ。作り手の体調や環境が時期によっても異なるので、急かさずに無理のないペースで丁寧に作ってもらうように依頼している。

編み物を作ることで、女性たちの考え方も変わってきた。「商品をいつまでに納品しなくちゃ、と思いながら編むことで、震災以降初めて前向きに日にちを数えるという経験をしました」との声が聞こえている。

ケイトアンドコーから出している商品は3種類ある。ウール100%のブーツソックス、ブーツソックス型のブローチ、そしてつなぐバッグだ。商品売上げの約25%~50%が作り手の収入となる。秋山さんは、「編み物が、つくり手さんたちにとって、生きがいになれば」と話す。

あたたかみのあるブーツソックス。ショートブーツ:3990円、ベイビーブーツソックス:2520円

東日本大震災から2年8カ月が経過し、「被災地支援商品」の売り方も変化したと錦小路さんは考える。「『買えば復興支援につながる』という売り方では売れないフェーズになった。しかし、そもそも、作り手の方々は『被災者だから買ってほしい』と思ったことはないはず。よく耳にしたのは、『このバッグを喜んでもらえたら、支援のときの恩返しに少しはなるかもしれない』という思いだった」。

お客さんは一個6800円ほどするそのバックを手に取り、「東北にこんなに技術の高い方々がいらっしゃるのね」「プロ級の編み目の美しさね」「心がこもっていてとってもあたたかい感じがする」と、女性たちのハンドメイド商品を次々に絶賛した。

商品タグには、それぞれ作り手の女性たちのメッセージが付いている。銀座三越でのポップアップショップは12月3日までだが、今後はECサイトを立ち上げて販売していく予定だ。

Kate&Co.の公式サイトはこちら