昨年、化粧品業界をリードする資生堂、マンダムの2社は動物実験を行わないと表明したが、今年はその後を追う企業が現れるだろうか。EUでは、動物実験をした化粧品の輸出入が禁止されており、今年に入り田村憲久厚労相が「代替法の予算措置を検討する」と発言した。すでに撤廃と宣言している2社以外は、動物実験に対してどのようなスタンスを持っているのか。(オルタナS副編集長=池田真隆)

1月28日、ザ・ボディショップを展開するイオンフォレストの福本剛史社長らは田村厚労相と面会し、同社が集めた動物実験に反対する約12万人分の署名を提出した。

そのときに、田村厚労相から、「化粧品は医薬品や食品と異なり、命にかかわるものではないため、すぐに法律で規制することは現実的に厳しい。しかし、美しさに動物の犠牲があることは、決して良いことではない。代替法を取り入れることを促進できるように予算をつけていこうと考えている」と話した。

昨年3月、最大手の資生堂が動物実験を行わない(中国向けは除く)と発表し、マンダムも続いた。しかし、動いたのは2社だけで、後に続く企業は現れていない。

オルタナS編集部では、田村厚労相の発言を受けて、改めて動物実験に対するスタンスを聞いた。平成24-25年の売上高が資生堂に次いで2位の花王は、「動物実験に反対の立場ではいる。代替法の研究を進めており、法律で定められていることを除いては実施していない」と広報の滝本忠さんは話した。行っている動物実験の規模については、公表できないと答えた。

カネボウ化粧品にも聞いたが、「動物実験には反対の立場にあり、代替法の研究開発を進めている。法的に定められたことを除いては実施していない」(同社広報担当 嘉瀬恵理子さん)と返答した。実施した動物実験の規模については、花王と同じく、「公表できない」だった。

NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)は昨年夏、化粧品業界売上ランキング上位19社に公開質問状を送り、補足取材として電話確認も行った。その結果は以下である。

(*「中国あり」とは中国に市場展開していること。中国では、同国に輸出される化粧品に対して、中国政府当局が指定する中国国内の試験機関での、当該化粧品に対する動物実験を義務付けている。資生堂、マンダムは中国への輸出は継続している)

アルビオン ■「動物実験は行っていない」
2008年には、「やむを得ず動物実験を行うことがある」と回答していたが、今回の調査では、「化粧品(医薬部外品含む)に対する動物実験は実施していない。原料段階でも行っていない」と回答。中国あり

クラシエホームプロダクツ ■医薬部外品の動物実験は継続
「化粧品(完成品、原料)のためには、動物実験していないが、医薬部外品のためには行っている」と回答。中国あり

コーセー  ■「動物実験を廃止」としているが、詳細は不明
「2012年4月から、動物実験を行っていない」と回答。しかし、「医薬部外品」、「原料」に対しての対応は不明。JAVAが補足取材で問い合わせたが、回答は拒否された。中国あり

再春館製薬所 ■「医学研究のため」動物実験に関与
「2003年10月以降の販売から動物実験していない」と回答。しかし、JAVAは、「慶應義塾大学や熊本大学とのヒトタンパク質(HSP)の共同研究でマウスを使用していることが明らか。同社は『医学研究のため』としているが、動物実験を通して商品開発している」と報告。

サンスター ■「本日現在実施中のものはない」
2003年には自社の動物実験施設を閉鎖。「薬事規制上、動物実験のデータを求められる場合、必要最小限の実験を実施する可能性があると考えているが、本日現在実施中のものはない」と回答。中国あり

日本メナード化粧品 ■実は2009年から廃止していたが、公表を控えていた
JAVAが2010年秋に行った公開質問では、「動物実験を全廃するには至っていない」と回答。しかし、今回は、「2009年3月から廃止した」と回答。2つの回答に相違があるとのことで、補足取材を行うと、「2010年11月の時点では、動物実験を廃止すると社外に公表することはできなかった」と、業界の空気を読んでいたことが判明。中国あり

日本ロレアル ■「法規制」「代替法がない」ので、動物実験を継続
「一部の国において、化粧品の安全性保証に動物実験が法規上義務付けられている場合、改めて安全性を証明する必要が生じ、必要な実験が義務付けられた場合など、代替法が存在しない場合に、動物実験を行う」とのこと。JAVAが、日本で動物実験を行っているのか問い合わせたが、回答はなかった。中国あり

ノエビア ■動物実験は行っていないが、ウェブサイトでは掲載なし
メナード同様、2010年秋の質問に対しては、「動物実験のデータが不可欠な場合がある
」と回答。しかし、今回は、「化粧品及び、医薬部外品、台所用洗剤の安全性・有効性にかかわる試験において、培養細胞などの動物実験代替試験法を用い、動物実験を行わない」と回答。しかし、同社のウェブサイトでは、動物実験の廃止について一切触れられていない。中国あり

ピアスグループ ■全ての質問に「回答拒否」
JAVAの質問には、「回答拒否」。電話で問い合わせても、「答えられない」とのこと。
中国あり

P&Gジャパン ■新製品の開発に強気の姿勢
「動物を用いた試験を可能な限り廃止し、代替法に置き換えていくことを企業方針として、明確に定めている」と。しかし、動物実験が要求される新製品の開発に関しては、「(新製品の開発は)あきらめない」と回答。中国あり

ファンケル ■責任は原料メーカーに
「従来より化粧品に関する動物実験は行っていない」と回答。しかし、2006年の厚生労働省薬事・食品衛生審議会化粧品・医薬部外品部会の議事録には、医薬部外品を化粧品に使用できるよう化粧品基準の改正要請(動物実験が義務付けられている)をしていることが掲載されている。これについて、JAVAが問い合わせたが、「メーカーにて取得された実験データをもとに当社が申請のみを行った事案」と回答。中国あり

富士フィルムヘルスケアラボラトリー ■化粧品では廃止だが、部外品では続行
「化粧品製品を用いた動物実験はすでに廃止している」と回答。しかし、JAVAが電話で問い合わせると、「医薬部外品は含んでいない」ことが明らかに。中国あり

ホーユー ■代替法が確立されるまで、動物実験は継続
「現時点では、全ての試験法において信頼性の高い動物実験代替法が確立されているわけではない。そのため、動物実験を完全に廃止できる状況には至っていないのが実情」と回答。中国あり

ポーラ ■動物実験は避けられない
「どうしても動物実験を回避できない場合がある」と回答。中国あり

ユニリーバ・ジャパン ■日本ではないが、中国では認める
「動物を用いてわれわれの最終製品の実験をすることはない」と回答。しかし、「(原料に対する動物実験を)どうしても避けることができない場合には、実験動物の数を最小限に行っている」と回答。中国あり

ライオン ■動物実験は自主的に行っている?
「人への安全性を十分に確認できない場合や代替法を用いることができない場合は動物実験を行う」と回答。その場合は、動物実験を自社で自主的に行っているのか、法的に求められて行っているのかでも違いがある。この点についての問い合わせには、「文面通り」の一点張り。中国あり

ロート製薬 ■動物愛護に対する意識は希薄
JAVAは、「茶のしずく石けんの事件を盾に、化粧品・医薬部外品分野での動物実験を正当化。EUをはじめとした各国の禁止措置、国内の大企業の廃止決定などどこ吹く風といった残念な姿勢」と話す。中国あり