「マンション内で気軽なコミュニケーションが生まれるエントランスは?」「思わず捨てたくなるゴミ箱とは?」――このような質問に対してオンライン上で不特定多数の人がアイデアを出していくサービスがある。サービス開始から3年10カ月で、12000人以上から30540個のアイデアが集まった。生活者視点で発想されたアイデアの中には、大手企業をうならせ、実際に採用されたものもある。(オルタナS副編集長=池田真隆)
このサービスの名称は、「みんなの企画会議 Blabo!(ブラボ)」。法人・行政がオンラインで「企画会議」と称して質問を投げかけ、ユーザーからアイデアを募る。企業の課題に対して、生活者視点を持ったユーザーが「私だったらこう思うかな」というアイデアを出していく仕組みだ。
ブラボのアイデアを通して、数々の企業が動いた。ガリバーインターナショナルが東日本大震災の復興支援として200台の中古車を東北へ送ったり、三井不動産レジデンシャルが今春竣工予定の都内マンションには、住民の交流を促す「食べ歩きマップ」をエントランスに設置するなど、複数のアイデアが実装される。
ブラボの利用者は業種、年齢、性別も異なるため、複数の視点からアイデアが出てくる。アイデアを形にしていく作業はプロのクリエイターと素人では、大きく差がつくが、「アイデア出しにかんしては、プロよりも良い感覚を持っている」と、三井不動産レジデンシャル市場開発部の川路武氏は言う。
「企業の論理で考えず、生活者視点で発想するので、前例のない空間が生まれる。すぐに利益につながるわけではないが、生活者の息づかいを感じることができるので、必ずこの先にヒントがあるはず」(川路氏)
三井不動産レジデンシャルとブラボが2年間かけて集めたアイデアの展示会「CROSSOVER展」
■コミュニティとビジネスの融合
コミュニティとビジネスの対立ではなく、融合を成し遂げた点に同サービスの魅力がある。ナイキやグーグルなどをクライアントに持つAKQAクリエイティブディレクターのレイ・イナモト氏は、「コミュニティがビジネスを食う時代になっている」とオルタナS編集部の取材(2014年2月3日)で答えた。
その象徴は、自宅を宿泊施設として、旅行者やバックパッカーに格安で提供できるサービス「Airbnb(エアービーエヌビー)」だ。世界192カ国34000都市に利用者が広がり、年間宿泊日数は、ヒルトングループを超えるという。
自宅だけでなく、個人が所有する車を格安でレンタルできるサービスも台頭しており、コミュニティの勢いが増し、ビジネスの存在価値がなくなっていくと、レイ氏は見ている。
しかし、ブラボでは、その対立を「融合」に変えた。ブラボの坂田直樹代表は、「ソーシャルメディアの発達でつながりあえたコミュニティを、交わらせることが重要になってくる。違う価値観を持った人たちのブレスト会議は、枠に収まらない意見が次々に出てくる」と話す。