今年に入りバイラルメディアの勢いが止まらない。リリース初日に10万PVを達成したり、初月で読者70万人、100万PVを成し遂げた例もある。広告費をかけずに、しかも、コンテンツの更新頻度は日に1~2本と少ないが、この勢いを持つのはなぜか。(オルタナS副編集長=池田真隆)
バイラルメディアとは、ソーシャルメディアと連携したキュレーションサイトだ。コンテンツを見た読者がフェイスブックやツイッターで拡散しやすい設計にしてあり、低コストで効率良く拡散できる。
代表的なサイトは、動画をキュレーションするアメリカの「Upworthy(アップワーシィ)」。約9000万人の月間読者を持つ。日本には2014年になってから複数のバイラルメディアが立ち上がった。主に社会的問題を取り扱った動画のキュレーションサイトとして機能する。
ユーチューブやvimeo(ビメオ)などから著作権フリーのコンテンツを使用し、動画を紹介するタイトルと短文を編集し、掲載する。どれも1~2分で視聴できる。
昨年12月1日に立ち上がった「dropout(ドロップアウト)」では、リリース初月で読者70万人、100万PVを突破した。貧困格差やLGBT、環境汚染など社会的問題を取り上げた動画を日に1本ずつ更新している。
2月22日にリリースした「旅ラボ」もオープンから2日で20万PVを達成した。世界中の「COOL(イケテル)」と「MATTER(社会的問題)」を動画と写真で発信する。編集者やキュレーター含めて10人ほどで運営している。
毎日、朝と夕に動画と写真コンテンツを1本ずつ更新する。週に1回はインタビュー記事も掲載する予定だ。スマートフォンでスクロールすると、自動的にページがつくられていくようになっており、旅の偶発性をイメージしたUI設計となっている。
ビジネスモデルは、記事広告での収入や、紹介した動画で実際に観光旅行につなげるなど、O2Oを考えている。初月の目標PVは500万という。
旅ラボを運営するnumber9(ナンバーナイン)の久志尚太郎共同代表は、「既存の旅行会社が扱うサービスでは、価格競争に陥りがち。現地の様子に特化した情報は紙媒体がメインでウェブでは少ない」と新規マーケットの開拓を目指す。
■コンテンツ引用に批判が集まらないわけ
一方、キュレーションサイトにコンテンツを引用された側の反応はどうだろうか。動画や写真に関しては著作権フリーであれば法的な問題はないが、コンテンツ作成者から批判の声は出てこないのか。
海外のIT情報に精通したウェブ編集者の佐藤慶一さんは、「アメリカでもコンテンツ作成者とバイラルメディアとの間で著作権に関する問題はあまり起きていない」と話す。
理由は、「バイラルメディアでは取り扱っている動画が深刻な社会的問題の場合が多い。なので、多くの人に知られるので、批判ではなく、称賛される傾向にある」と言う。
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