約500のブランドが出展した国内最大のファッションとデザインの展示会「rooms(ルームス)」のエシカルエリアを担当する坂口真生ディレクターに、エシカルファッション界の流行を予想してもらった。今後流行るエシカルブランドには「多様性」がキーワードと上げた。その訳とは。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)
――エシカルとは直訳すると「倫理的」です。そのため、広義な意味を持ち、定義付けすることが難しいです。去年からルームスではエシカルエリアが新設されていますが、出展ブランドを選ばれるときには、どのようにエシカルを定義付けしましたか。
坂口:フェアトレード認証やFSC(森林管理協議会)認証のように、エシカルに認証機関は存在しません。エシカルファッションを一個一個カテゴリーごとに掘り下げると、フェアトレード・リサイクル・アップサイクル・チャリティーなど複数あります。
その言葉自体が広義な意味を持つので、言葉にとらわれすぎると薄くなってしまうこともあります。
あえて言うならば、エシカルエリアでのエシカルの定義は、ぼく個人が決めた定義です。現時点では、エシカルにおける共通した具体的な定義はないため、それぞれの人の価値観で決めるしかないかと思っています。
――坂口さんの基準はどのようなものでしょうか。
坂口:ぼくが決めたエシカルの目的は、「モノを通して気付きの連鎖を起こすこと」です。その気付きとは、例えば地球環境に対しての配慮や児童労働の撤廃などです。
もともとエシカルの概念は、先進国の物質主義が発展し過ぎたから生まれたのだと思っています。もし全員が自然と調和した生活を送っていたら、必要なかったキーワードだったでしょう。
――今後、エシカルファッションブランドが拡大していくためにはどのような点を強化していったらよいとお考えでしょうか。
坂口:エシカルの枠組みを超えて面白いことに挑戦して欲しいですね。
エシカルの言葉にとらわれすぎずに、まずはファッションブランドとして地位を確立し、フェアトレードやリサイクルではなく、デザインで評価されるブランドが続々と誕生してほしいです。
世の中の流れが、エシカルに動いていることは実感しています。バイヤーたちと話していても、「モノを売る方向性をエシカルにしたい」という声をよく聞くようになりました。
――エシカルのコンセプトとプロダクトがマッチすると付加価値となります。たとえば、ハスナでは結婚指輪を販売していますが、「幸せの象徴に犠牲はいらない」と原料調達における児童労働や搾取労働を一切行っておりません。この付加価値は結婚指輪以外でも適用できそうです。
坂口:ライフスタイル全般に応用できますね。これから流行るエシカル商品は、人のライフスタイルに寄り添う商品だと思います。具体的には、インテリア雑貨、グッズ、アクセサリーなどです。もちろん、一番期待しているのはファッションですが。
色々なジャンルで、エシカルブランドが出てくると層が厚くなります。エシカルのキーワードがあいまいなままだと勢いが終わってしまうので、意味にとらわれることなく、多様なエシカルブランドが出て来ると良いなと思います。人でも、モノでも、プロジェクトでも良いし、自然体で思わず笑ってしまうものでも良いですね。