「手話」という存在を知っている人は多いだろう。今では、インターネットで検索すれば、あいさつや自己紹介の用例などの簡単な手話を調べることができるようになった。しかし、これらの情報は日本語から手話への対訳を扱っているものが主で、いわば国語辞典があって漢和辞典がないような状態である。(オルタナS編集部員=佐藤理来)

SLintoのトップ画面

もちろん皆無ではないのだが、紙媒体の辞典のため改訂に時間を要すなど多くの壁があり、情報として乏しい環境にあった。そこへクラウド型の手話‐日本語辞典SLinto Dictionaryを作ったのが、手話ビジネスを扱うベンチャーのシュアールだ。

文字を使わない「手話」をどうやって表現するのか。SLintoは手話の構成要素、「位置」、「形」、「方向」、「動作」の4つのうち「位置」と「形」に焦点を当て、絞り込んでいく仕組みになっている。世界初の手話キーボードで使用される指の本数と体に対する位置を指定し、検索すると条件に合う手話の動画がヒットする。あとは具体的な動きを見ながら自分が知りたかった手話を探していけばよい。

開発の際にはクラウドファンディングで資金を募り、目標金額を191%達成した。アップされている動画は有志によるもので、誰でも参加可。登録時に地域を申告することで、130あるという手話方言にも対応する。

点字が墨字を点で表現したように手話も日本語を身振りに換えたものだ、と捉えられることもあるが、実際の性質はかなり異なる。音声を持たない状態で、単語も日々増え変化しながら生きている、体系を持つ独立した言語そのものである。

シュアールが目指すのは手話のウィキペディアだそうだ。今は日本語手話がメインだが、いずれ各国の言語にも対応するという。日本には手話を母語とする聴覚障がい者が8万人、障がい者手帳を持つ聴覚障がい者は36万5千人、さらに健聴者として手話を学ぶ人も含めると、非常に多くの人が使っている。SLintoの登場によって手話学習者をとりまく環境は大きく変わっていくのではないだろうか。

・SLinto Dictionary
http://slinto.com/jp/