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東京工業大学で進められている興味深い研究がある。海水に1800兆トンも含まれるといわれるマグネシウムを抽出し、エネルギー源として利用。その後、使用済みの酸化マグネシウムをリサイクルすることで石油・石炭の代替エネルギーすることを目指す。

研究を率いるのは、東京工業大学の矢部孝教授。アメリカのタイム誌で「Heroes of the Environment 2009」の一人として紹介されており、世界的に注目を集めている。

マグネシウムの利用は以前から研究されていたが、コストの高さから代替エネルギーとしての利用には至らなかった。その課題を解決したのが、矢部教授の「太陽光励起レーザー」の技術だ。

マグネシウムの精錬には約2万℃に匹敵するエネルギーが必要とされ、莫大な資源が必要だった。しかし、太陽光を直接レーザーに変換する技術によって低コストでの超高温のエネルギーが実現。これにより、マグネシウムの精錬が可能となったのだ。

また、マグネシウムは海水から抽出されるため、その過程で抽出後の海水は淡水となる。これを利用した淡水化装置も組み合わせることで、世界のエネルギー問題と水不足の両方を一挙に解決できるという構想が、矢部教授の提唱する「マグネシウム循環社会」の実現だ。

この構想が実現すれば、限界を迎えつつある石油文明からマグネシウム文明への扉が開かれるかもしれない。(オルタナS副編集長 高橋遼)


■参考URL
The Magnesium Civilization
http://www.mgciv.com/blog/what-is-magnesium-based-energy-cycling.html