東京青山に一足早く「桜」が開花した。華道家・前野博紀氏が東日本大震災の犠牲者への慰霊のため、つくり上げたものだ。バイオリニストやチェリストの演奏に合わせて、福島の木くずやがれきの間に桜を次々に刺していき、10分もしないうちに幻想的な作品が完成した。(オルタナS副編集長=池田真隆)
伊藤忠商事は3月10日、本社横に構える伊藤忠青山アートスクエアで東北への鎮魂を祈るイベントを開催した。華道家の前野博紀氏の呼びかけで、能楽師の津村禮次郎氏、バイオリニストの古澤巌氏、チェリストの大藤桂子さんが集まった。楽器の演奏が始まると、前野氏が桜を生けていき、完成した作品を前に津村氏が能楽を披露した。
4人の芸術性が混ざり合う様子を見ようと、会場には160人が集まった。前野氏は、「今後いつ災害が来るかは分からない時代。だからこそ、東日本大震災での痛みと悲しみは決して忘れてはいけない」と話した。
前野氏は環境省と協力し、岩手県や宮城県のがれきを使って花を生ける活動をしてきた。緊急フェーズが終わった今こそ、「芸術は必要とされる」と話す。「アートは、衣食住を満たすことができない。しかし、衣食住がある程度安定してきたときこそ、一歩踏み出す勇気を与えれる」。