パン・アキモト(栃木県那須塩原市)は保存用パンの缶詰を生産・販売している。これを非常時のために備えながら、飢餓対策支援活動にも参加できる「救缶鳥プロジェクト」を展開中だ。同社の社会貢献活動に共感して入社した白濱康太郎さん(27)に取り組みの狙いや成果などについて聞いた。(聞き手=オルタナS関西支局特派員・増田 智有)

「パンの缶詰を通じて社会貢献したい」と語る白濱康太郎さん=大阪市中央区の同社関西営業所

「パンの缶詰を通じて社会貢献したい」と語る白濱康太郎さん=大阪市中央区の同社関西営業所

――「救缶鳥プロジェクト」とは。

白濱:保存用パンの缶詰「救缶鳥」は賞味期限が3年ありますが、残り1年になったところでアフリカやアジアの貧困地域および被災地に義援物資として送るプロジェクトです。購入者の希望により当社が無償で回収し、ケニアやフィリピンなどに届けます。きっかけとなったのは、2004年に発生したスマトラ島沖地震です。

被災地からの要望でパンの缶詰を提供する一方、国内のある自治体から賞味期限の切れたパンの缶詰5000個の処分を依頼されました。食糧に対する日本と他国の感覚の違いに社長の秋元が疑問を抱き、まだ食べられるパンの缶詰を利用する仕組みを考案し、2009年にプロジェクトが誕生しました。現在約18万缶備蓄されており、これまで東日本大震災の被災地に約4万3000缶を届けてきました。

――入社したきっかけは。

白濱:22歳のとき急性膵(すい)炎になり、1週間の絶食をしたことで食べ物のありがたみを痛感しました。退院後、それまで働いていた喫茶店で大量の残飯が捨てられることに疑問を感じるようになり、食べ物に困る人たちのために何かしたいと、ボランティア活動などに参加していました。

そのなかで訪れた日本国際飢餓対策機構というNGOで、パン・アキモトの義援物資としても活用されているパンの缶詰を食べ感動したことが、入社を志望する動機になりました。

――これからの展望は。

白濱:とにかく救缶鳥を広めたいです。人々の防災意識を高めつつ、飢餓の現状も伝えていくことで、苦しむ人を1人でも多く減らすことにつなげたいです。また、学生との共同プロジェクトを積極的に行う予定です。救缶鳥の缶のデザインを依頼したり、海外の飢餓地域や東北の被災地に足を運ぶスタディツアーを開催したりできれば、飢餓や災害を身近な出来事と感じてもらえるのではと思います。

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