折りたたみ可能なパンプス、緊急用品が入ったポーチ――開発したのは、若者の防災意識を高める啓発活動を行う「防災ガール」たちだ。大学生や社会人の20代女子を中心に、全国に50人ほどいる。任意団体だが、立ち上げ1年間で企業や地方行政から計50件ほどの協力依頼が来て、じわじわと防災業界で注目を集めている。(オルタナS副編集長=池田真隆)

防災をテーマにしたセミナーに登壇する田中さん

防災ガールは、2013年3月11日に立ち上がった。立ち上げたのは、フリーで個人向けコーチング事業を行う田中美咲さん。企業や行政から防災関連事業に、20代女性の感覚を取り入れたいと、週に1件の割合で依頼が来る。

今年3月には、ホームセンターの東急ハンズと組み、横浜店で防災グッズの手作りワークショップを開催した。さらに、高知の地域ブランディング事業を行うトレードマーク高知と組み、防災ガールのオリジナルブランド「SABOI(サボイ)」を立ち上げた。

サボイでは、災害時の避難方法や心肺蘇生、応急手当など緊急時の対処方法が記載された手ぬぐいや、フルーツグラノーラの非常食を販売している。フルーツグラノーラの賞味期限は非常食としては短い1~2カ月だが、そこに狙いがある。短くすることで、非常食を普段も食べる習慣をつけるのだ。

ネットショップで販売し、手ぬぐいは700円、フルーツグラノーラは300円だ。今後は、緊急時に走って避難できるように折りたたみ可能なパンプスや、マスクやライト、バンドエイドなど緊急用品7点が入ったポーチも販売する。

折りたたみ可能なパンプス

防災対策の情報が記載された手ぬぐい

防災ガールのメンバーは50人いる。フェイスブックやツイッターなどSNSで集めた。団体の運営やプロジェクトの企画を考えるコアメンバー10人、イベント当日のスタッフを務めるボランティアメンバー40人が所属している。大学生と社会人が半分ずつで、男女比は2対8だ。

防災ガールたちと話す田中さん(中央)

月に1回、グーグルハングアウトを使ってコアメンバー10人で2時間ほど会議する

防災ガールの代表である田中さんは2011年に立命館大学を卒業すると、新卒でITベンチャーへ就職した。ソーシャルゲームのプロデューサーなどを務めたが、もともとコーチングに興味があり、人の命にかかわる仕事がしたいと2012年7月に退職する。

全米NLPコーチング協会認定マスターなどの資格を持ち、独立を考えていたところ、公益社団法人助けあいジャパンの佐藤尚之会長(当時)から声がかかった。東日本大震災で防災意識も芽生えていたこともあり、助けあいジャパンに入ることを決めた。福島市に引越し、新規事業を立ち上げた。

2013年12月に助けあいジャパンを辞めて、防災ガールの活動に本腰を入れた。時期は未定だが、NPOか社団法人化する考えだ。「おしゃれ、かわいいを切り口にして、若者の防災意識を高めたい」と意気込む。

防災ガール