かつて400頭以上が捨てられて「犬捨て山」と呼ばれた山梨県の山奥に10年間以上通い続ける学生サークルがある。学生たちは毎日日替わりでシフトを組み、ボランティアで犬の飼育を行う。今でさえ、犬の数は19頭となったが、老犬であることで里親が見つかることは困難だ。(オルタナS副編集長=池田真隆)

人に慣れていない犬を「一時預かり」して散歩に連れ出す。写真の犬は、里親がなかなか決まりにくいなか、飼い主が決まった

山梨県で起きた犬の多頭飼育問題は、20年前にさかのぼる。同県で不動産を営む男性が次々と自宅に犬を拾い集め、1年間でその数40頭に及んだ。不妊治療をしていなかったことで、犬の数はすぐに増えて、その男性が所有する山奥の土地に犬たちを連れて引っ越した。

男性一人で飼育管理ができず、周辺住民から「悪臭」や「鳴き声がうるさい」とのクレームが殺到した。マスメディアも「犬捨て山」と紹介すると、その男性は「もっと犬を連れてこい」と発言した。そして、その発言がニュースで報道されたことで場所も特定されてしまったため、日本全国から犬を捨てに来る人が急増した。その結果、400頭の犬が集まったのだ。

無数の犬小屋が並ぶ

そのとき、男性は亡くなってしまったので、犬は野放しにされてしまった。そこから、今日までの20年間、民間のボランティアによって犬たちは飼育されてきた。里親が見つかった犬もいるが、多くは亡くなってしまった。男性がなぜ犬を集めたのかは不明だ。

その男性と生前から親交があった小林昭夫さん(72)は、「(なぜ犬を集めているのか)いつも理由を聞いても違った答えが返ってきた」と話す。小林さんは、現場に一人で住み込み、ボランティアで飼育をしている。

■10年間ボランティアで通う学生たち

その現場を10年以上支援している学生サークルは、「動物の命の大切さを考える部~SWEET HEART~ 多頭飼育問題改善活動班」だ。山梨県上野原にキャンパスがある帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科の学生たちがつくった団体だ。現在は11期目だが、2期目からボランティア活動を始めている。

今年の3月には山梨県に大雪が降った

メンバー20人ほどでシフトを組み、毎日現場に通う。餌や水やりに加え、犬小屋の掃除、散歩などを行い、小林さんの補助をする。同班の11期代表の村田沙弥香さん(同大学アニマルサイエンス学科3年)は、「人間に慣れていない犬が多い」と話す。

犬の世話をする村田さん

19頭残っているが、10歳を超える犬がほとんどだ。里親希望者もなかなか表れないという。村田さんは、「最後くらいは、温かい場所で過ごしてほしい」と訴える。

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