インドのタミルナドゥ州にある、「オーロビル」というエコヴィレッジをご存知だろうか。ヒューマニティの実現を目的としており、 1968年に発足、 現在は約2300人の多国籍の住民で構成されている。宗教や国籍、文化の壁を超えた持続可能な理想都市であることから世界最大のエコヴィレッジなどと称される。私は現在、ここに滞在し、ボランティアとして働いている。(オルタナS特派員=小川美農里)

心身を安定させる呼吸の練習

オーロビルでは、多くの仕事がボランティア、つまり無償で行われている。不思議なことに、金銭的な報酬を目的とせずに、多くの人々がこの地に魅了され集まっている。

彼らは、金銭以外の「何か」を報酬として得ている。そしてそれは、人々の幸福に関連しているに違いない。

私は、インドに来る数カ月前まで、日本国内の病院で看護師として約4年働いていた。身体的・精神的に病を持つ方に多く出会った。また、同時期に、大阪の西成区、「釜ヶ崎」と呼ばれる地域にも通っていた。

ホームレス状態の方に多く出会った。「迷惑をかけたくない」と多くの方が語り、身体的にも精神的にも、ギリギリの状態で路上で暮らしていた。疾病予防や健康増進よりも、重症化した状態で施される医療の矛盾を感じた。

幸福に関する「何か」を、日本に持ち帰り、実践したい――そんな思いを持って、この地にやってきた。

私は、オーロビル内に滞在しながら、周辺に位置する約3000人の村のヘルスセンターで働いている。村の女性たちを中心に、ヨガやエクササイズを行い、身体的な痛みがある方へはマッサージを施している。生活習慣病を持つ方も多いため、近くのクリニックと連携し定期的な検査でフォローアップも開始する予定だ。

村の女性にマッサージを行う

隣接する公立小学校での健康教育にも関わっている。高齢で在宅介護が必要な方の介護を、泊まり込みで行っている。もちろん、すべて無償だ。

昼休みにヘルスセンターに来る小学生

現在、滞在して約一カ月半が過ぎた。仕事以外でも、さまざまなワークショップに参加する機会も多く、毎日が学びと成長の連続で、次に何をしようかと、ワクワクしている。働く上でのストレスがとても少ない。多くの人々が穏やかで、驚くほど親切だ。なぜだろう。

ヘルスセンターの責任者を担っている看護師のM.Muthukumari(31)は、笑顔でこう語った。「私は、この場所で、人々の健康や幸福に関わる仕事を担っている。自分の持つ技術や知識を伝えて、拡げていくことが私の与えられた役割。こうして働けることは幸せなことだと思っている。お金は、必要な時に必要な分が回ってくる」。

オーロビルでは、個々の持つ多様な資源を活用し、共有できるような環境が整っている。ここに集う人々は、金銭的な報酬以上に、個々の成長や自己開発につながるような、形を変えた報酬、満足感を得ているように感じる。ギフトエコノミーを、実践しながら更に学んでいきたい。