「NPO業界の人たちはもっと危機意識を持つべきだ。今の状況で良い方向に進むことは考えられない」――元文部科学副大臣の鈴木寛氏はこう叫んだ。鈴木氏が発言した背景には、税制優遇となる認定NPO法人制度が大幅に見直される動きがある。NPOが持つコミュニティー力を生かして署名活動や議員へのロビーイング活動を強化していくことが今こそ、求められている。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

集まった参加者たちに現状を共有するシーズ・市民活動を支える制度をつくる会の松原代表理事(写真右)と関口宏聡常務理事

5月9日、東京・中野の中野サンプラザにNPO法人の理事ら100人以上が集まった。認定NPO法人制度の肝が縮減・廃止されようとするなかで、対策会議を行ったのだ。呼びかけたのは、2011年に新寄付税制やNPO法改正を実現した認定NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会(東京・千代田)だ。

法人税を減税する方向で進むなか、これまでの租税特別措置をゼロベースで見直す方針だ。その見直しの検討対象に、認定NPO法人制度の4大メリットのうち2つが入っている。一つは、NPO業界の収益事業が一定条件で減税となる「みなし寄付金」、もう一つは、法人の寄付金が損金として計上できる「損金算入限度額」だ。

特に廃止が濃厚なのが、みなし寄付金である。なぜなら、租特が見直される条件に、「利用実態が特定の団体に集中していること」がある。例えば、不特定多数を対象にすることを想定にしながら、上位10社の適用額が8割以上である場合などだ。

みなし寄付金の上位10団体での額は、全体の94%に及ぶ。一方、損金算入限度額は、57.9%で見直しの条件には引っかからない。

当日、一般参加として会合に訪れていた鈴木寛氏は、「危機意識を持って動かなければいけない。ロビーイング活動に慣れていないかもしれないが、一刻も早く動かないといけない。早ければ秋ごろを目処に結果が出る」と発言した。

財務省の税制調査会・法人課税DG(ディスカッショングループ)は9日、会議資料を発表した。その資料には、「一般の民間法人と競合する分野が生じていることを踏まえて、公益法人への課税を再検討するべき」「収益事業により生じた所得のうち一定割合をみなし寄付金として損金算入できる制度を認め、さらに軽減税率を認めることは過度な優遇となるだろう」という趣旨が記載されている。

認定NPOの税制優遇の肝がなくなる危機に、シーズ・市民活動を支える制度をつくる会の松原明代表理事は、「団体が結集し署名活動を実施するなど、NPOのプレゼンスを高めていく必要がある」と話した。