漫画「美味しんぼ」が紹介した福島県民の鼻血についての記述に批判が集まっているなか、フォトジャーナリズム誌「DAYS JAPAN」の広河隆一編集長は13日、チェルノブイリの原発事故後、周辺住民の5人に1人が鼻血を訴えていたことを明らかにした。広河編集長は「鼻血が出ると訴えている人がいることを認めて、それが病気に結びつかないようにするための議論をするべきだ」としている。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
広河編集長は1993年から1996年にかけて、チェルノブイリ原発事故の避難者に対して、健康状況についてのアンケートを実施した。
このうち原発から3キロ離れたプリピャチ市の避難民9501人には「事故後、1週間で身体に感じた変化はあった」と聞いた。その結果、19.3%(1838人)が「鼻血が出た」、56.3%(5346人)が「異常な疲労感を覚えた」と回答した。
原発から17キロ離れたチェルノブイリ市の避難民2127人にも同じ質問をした。すると、「鼻血が出た」と回答した人は21.6%(459人)、「異常な疲労感を覚えた」という人は61.7%(1312人)に達した。
さらに、45キロ離れたポレスコエ地区の避難民1005人のうち、29.1%(292人)が「鼻血が出た」と答え、59.2%(595人)が「異常な疲労感を覚えた」と回答した。
この調査は、1986年の事故から約10年が経過してから行ったものだ。質問項目には「現在(1996年時)の健康状態」について聞いたものもあったが、いずれの地区でも「鼻血が出た」と答えた人の割合は2割で、「疲れやすい」が5割を超えていた。
広河編集長は2012年7月、沖縄県久米島に福島の子どもたちの保護施設「沖縄・球美の里」を設立した。「ここに訪れた保護者から、鼻血のことはよく聞いていたので、福島では当たり前だと思っていた」という。
今回の美味しんぼ騒動については「鼻血がありえないという話になると、何らかの意図が働いているのかと疑ってしまう。鼻血を訴えた人がいることを認めた上で、それが大きな病気に結びつくことを防ぐための方法を話すほうが建設的ではないか」と話した。