私は今まで、数多くの死を直面する人々を取材してきた。紛争地に住む人々は、毎日空爆や戦闘から逃れ「今」というリアルタイムに流れる時間の事だけを考え生きる人々。ユーチューブなどに配信されるシリアの最前線の戦闘の様子を記録している動画には、無残にも内臓が飛び出たり、脳みそが道に落ちていたりする状況で亡くなる人々もいる。(吉田尚弘)

他にも、スラム街などで病気になってしまい、医薬品を購入ができずに亡くなってしまう人。先進国で裕福な生活を送っている人々でも突然の事故に遭い、亡なる人もいる。一方で、長寿して家族に看取られながら幸せにこの世から姿だけを消す人々もいる。

同じ「死」という出来事でも、人の数だけストーリーがあるという訳だ。そして、私が注目をしたいのは自ら命を絶ってしまう自殺という脅威の存在だ。死に対し、向き合いながら取材をする私であるが、実は私も自分自身の死を何度も考えている。その理由は、私自身が発症をした精神疾患の存在だ。

私は取材活動を行う記者である一方、実は自らも中学生から強迫性障害と鬱病など複数の精神疾患といわれる性格を持ち合わす当事者でもある。(性格と呼ぶ理由は、後に説明する)

高校生時代は、学校に通う事も出来ず真っ暗な家で閉じこもり、ただただ時間が経過するのを待っていた。当時の私は、といかく寝ている時に勝手に死ぬ事を常に願っていた。とにかく力尽き、ご飯を食べたたりトイレに行くことすら面倒に感じ、終いには一日に一言も言葉を発しない日が増えた。

それが、私の日常だった。実は、この様に一見元気に見えても何らかの精神疾患や問題を抱える人々は非常に多い。そして、救う事が出来ずにいる人々が大変多くいるのが、私たちの住む日本という国なのかも知れない。

警察庁の発表では、2013年の自殺者が「2年連続、3万人下回る。」と大きく発表したが、じっくり考えて欲しい。めでたい様に感じるこの文章。しかし、3年前は3万人以上の自殺者が連続していた。という裏付けではないか。この3万人という自殺者は当たり前なのか。

いやそうではない。この人数を世界規模で見ると、日本は欧米先進国と比較するとかなり高い自殺率となっている。さらに範囲を広げた国際比較では、2010年のWHOが発表したデータを元にすると、日本はリトアニア、韓国などに次ぐ世界第8位の自殺率の高さとなっている。

世界中から幸せな国というイメージを持たれている日本ではあるが、裏を返せばこの実態。この環境で果たして本当に幸せと言えるのだろうか。

そして、多くの自殺者の共通点として自殺を行う際に、何らかの精神疾患を発症しているということ。逆に言えば、健康であれば自殺など行わないわけであり、精神状態が自分ではコントロールが付かない状態になり自殺に及ぶということも言えるだろう。

本連載は、その大きなキーワードである精神疾患について、医療関係者や当事者などの取材を積極的に行い、自殺大国=精神疾患大国日本の現状を読者と一緒に考えていきたいと考えている。

私の願いは、とにかく身の回りに精神疾患で困っている人がいれば、少しでも手を差し伸べ、精神疾患を持っていることを隠すことなく、個性として、日常生活を行っているいける世界を構築することだ。

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