8月24日、宮城県の名取市文化会館で「東北四季の音楽祭」と題した入場無料のクラシックコンサートが開催される。主催するのは、音大生・芸大生・演奏家と連携し、広く一般市民が芸術に触れる機会を創出し、芸術文化のさらなる敷衍と地域活性化に貢献しようと昨年発足された団体「Neighbor Arts」だ。(今一生)
大学で音楽を専門的に学んだ音楽家・演奏家でも、演奏のみで生計を立てることは非常に困難。卒業後の経済的基盤を確立することに不安を抱いている音大生も多く、大学で音楽を専門的に学ぶこと自体を断念する人もいる。
そこでNeighbor Artsは、この状況を「社会的問題」ととらえ、事業を通じて解決をめざしている。
同団体で共同代表を務める小嶋秀治さんは、「Neighbor Artsは、音大生・芸大生・演奏家と連携し、広く一般市民が芸術に触れる機会を創出し、芸術文化のさらなる敷衍と地域活性化に貢献します」という。
小嶋さん自身、子どもの頃からバイオリンを習っていた。だが、先輩から「卒業後の進路が絶望的。演奏活動では食えず、コンビニでバイトをしている人もいる」と聞き、不安を覚えて一般の大学に進学。現在は慶應大学院生だ。
今回のコンサートでは、プロ並の技術を持つ音大生・芸大生4人から成る弦楽四重奏が聞ける。ふつうの人にクラシックへの敷居を下げるために。モーツアルトやドボルザークの名曲はもちろん、大ヒットした映画「アナと雪の女王」の「Let it go」やNHK発の復興支援ソング「花は咲く」なども演奏する。
現在、430席ある会場へ観客を動員するため、地元の議員に広報を手伝ってもらうなど奔走中だ。会場使用料や交通費、演奏家へのギャラなどの運営費10数万円も「知人の経営者に支援してもらったり、現場でカンパも募集する」という。
資金の不足は今後の課題だが、「年4回やっていきたい」と小嶋さんは意気込む。名取市は3・11の大震災で大きな被害を受けたまちの一つ。地元の若手演奏家が出演したり、プロ演奏家が地元の10代を指導したり、それらのようすをネットで世界に知らしめるなどの工夫がほしいが、そうした地元市民への配慮も今後の課題になるだろう。
・Neighbor Arts
http://neighborarts.wix.com/neighborarts