トランプ大統領就任と当時に、ホワイトハウス公式サイトから気候変動のページが完全に消えた。代わりにサイトには「気候行動計画のような有害で不必要な政策を排除する」と掲げられている。そんな気候変動問題を蔑ろにするトランプ政権の動きと関係なく、今日も世界の生産者たちは、気候変動の深刻な脅威に晒され翻弄されている。(中島 佳織=特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長)

フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長の中島佳織氏

2016年9月、米国・ワシントンD.C.にある環境NGO気候研究所(Climate Institute)が発表した報告書によると、温室効果ガス削減に向けた対策を強化しない限り、2050年までにコーヒー耕作地の50%が失われると予測されている。

開発途上国にとって、貿易産品の中で第2の輸出額を誇るコーヒーは、世界70カ国以上、1億2千万人以上の人々の生計を支えている。世界のコーヒー農家の約9割は小規模農家で、気温上昇と降雨パターンの変化が引き起こす収穫高と品質の低下、さび病などの病虫害の被害拡大が、彼らの貧困に拍車をかけている。

開発途上国の小規模農家や農村が、CO2を削減しつつ気候変動へ適応していけるよう、フェアトレード・インターナショナル(本部ドイツ・ボン)は、気候変動防止や持続可能な開発への質の高い貢献を保証する世界的環境認証基準「ゴールド・スタンダード」と共同で、「フェアトレード気候スタンダード」を設定。
 
この新基準で「フェアトレード・カーボン・クレジット」の仕組みを開発した。例えば、木材燃料に頼らないバイオガスを取り入れるなど、農村の住民自ら気候変動への対策プロジェクトを実行する。その結果として達成したCO2排出削減量をカーボン・クレジットとして販売し、その売上を使ってさらなる気候変動への対策を継続できるという仕組みだ。
 
カーボン・クレジットの売買価格には、気候変動対策プロジェクトの実行に必要なコストをカバーするため、フェアトレード最低価格が定められている。加えて、フェアトレード・プレミアム(奨励金)の保証もあり、住民らはさらなる気候変動への取り組みが可能となる。

■DHLが革新的なオフセット

この新基準のもとで初の認証取得となったのが、アフリカ南部の内陸国レソト王国でのプロジェクトだ。過去25年間で国家の3分の2の森林を喪失し、このままいくと、あと15年のうちには完全に森林を喪失するといわれていた。
 
原因だった調理用薪のための森林伐採を減らすため、農村に1万台の低燃費コンロを導入。薪の使用量削減だけでなく、温室効果ガス排出量を80%削減した。このプロジェクトのドナーは、世界最大の国際輸送物流会社であるドイツポストDHLグループだ。このプロジェクトで生み出される「フェアトレード・カーボン・クレジット」を買い取り、自社の輸送関連事業から排出されるカーボンをオフセットしている。
 
この革新的な「フェアトレード・カーボン・クレジット」の仕組みはまだ始まったばかりの新しいチャレンジだが、持続可能な開発目標(SDGs )が掲げるように、「誰一人置き去りにしない」ためにも、開発途上国の小規模農家や農村が、気候変動の脅威に打ち勝っていけるよう、今後の普及が期待される。
(雑誌「オルタナ」48号「フェアトレードシフト」から転載)

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中島佳織:
特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長。大学卒業後、化学原料メーカー、国際協力NGO、自動車メーカーなどで勤務。タイでのコーヒー生産者支援プロジェクト立ち上げ・運営やケニアでの勤務経験を持つ。2007年1月FLJに入職、2007年6月より現職。共著に『ソーシャル・プロダクト・マーケティング』(産業能率大学出版部)など

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