「そろそろ、エシカルを伝えながら販売していく時期になってきた」――老舗ジーンズメーカー リー・ジャパンの細川秀和取締役はそう話す。細川取締役は、これまで、メーカーの役割を、「購入者が、製品の背景を購入後に気付いて、勉強してもらう筋書きをつくること」と話していた。販売時に、エシカルは表に出さないという姿勢を持っていたが、消費者の社会性を求める声が高くなり、エシカルかどうかが購買動機の一つになってきたと実感している。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

トークショーに参加した登壇者たち(右から、大正紡績・近藤営業部長、リー・ジャパン細川取締役、ピープル・ツリーサフィア代表、モデレーターは末吉里花さんが務めた)

トークショーに参加した登壇者たち(右から、大正紡績・近藤営業部長、リー・ジャパン細川取締役、ピープル・ツリーサフィア代表、モデレーターは末吉里花さんが務めた)=9月3日、中目黒ビオキッチンスタジオで

フェアトレードブランド ピープル・ツリーは9月3日、リー・ジャパンとコラボレーションしたオーガニックデニムを販売する。同日、販売を記念して、トークショーが行われた。登壇したのは、ピープル・ツリーのサフィア・ミニー代表、リー・ジャパンの細川取締役、糸を製造した大正紡績の近藤健一営業部長。

同製品は、原料から調達、加工などすべての過程で、倫理性を追求した。製造過程の透明性やエシカル性は申し分のないできであるが、今後は販促方法が課題となる。エシカルの認知度は13%(デルフィス エシカル・プロジェクト 2012年「エシカル実態調査」)で、一般には普及されていない。さらに、製品のPRをするさいに、エシカル性を伝え過ぎると、ファッション性を求める顧客に距離を感じさせてしまう危険性もある。

トークショーでは、「製品のエシカル性とファッション性をどのような比率で伝えていくのか」と質問が出た。細川取締役は自社だけでなく、「大学生や識者、NPOなどと連携して、多角的に発信していく」と答えた。

近年、エシカルファッションをテーマにしたイベントが続々と行われており、徐々に市場は拡大していると見ている。エシカルファッションをテーマにしたイベントでは1000人を集客し、高島屋やルミネ大宮などの人気ファッションビルでもエシカル催事が行われた。

この動きに、細川取締役は、「購入時に商品のエシカル性を伝えていく段階になってきたはず」と考える。「一つの企業や団体が太い情報を発信するのではなく、さまざまな団体と連携し、複数の細い情報を一斉に発信していく組織をつくっていきたい」。

「まず、製品を触って」

激安製品や大量生産品などの製造現場は、児童労働や環境汚染の温床となっている。エシカルファッションを盛り上げていくために、サフィア・ミニー代表は、「企業と購入者が一つになることが必要」と考える。

「オーガニックコットンの製品を購入する人がいるということが、生産者に誇りと自信を与え、これまで続けてこれた」(サフィア・ミニー代表)

ピープリ・ツリーとリーがコラボレーションしたデニムを穿いて

ピープリ・ツリーとリーがコラボレーションしたデニムを穿いて

大正紡績の近藤営業部長は、エシカルに興味のない人へ伝えていくために、「まず触ってもらうこと」が重要とする。近藤部長は大学で講義するさいには、授業時間の半分を口頭で説明し、残りは、オーガニックコットンの製品を触ってもらうようにしているという。

「本当に良いものは触れば分かるはず。エシカルなファッションとは、着て、幸せを感じられる製品のことだと思っている」(近藤部長)

同製品は、フェアトレードで購入したオーガニックコットンを使用し、大正紡績で糸に加工した。オーガニックコットンを生産しているのは、インドの小規模農家「アグロセル」。同農家は、ピープル・ツリーと契約を結ぶ生産者パートナーで、綿花はすべて手摘みで、在来種を守りながら自家採種している。

製品は、レディースでデニムスカート(12000円)、デニム(14000円)、スキニー(14000円)とメンズ(15000円)がある。現在、ピープル・ツリー自由が丘店で販売しており、モザイクモール港北と通信販売で予約を受け付けている。10月上旬からは、リー直営店、全国のピープル・ツリー商品取扱店での販売が始まる。

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