日本財団は12月1日、ハンセン病患者が受けた差別を撤廃するための啓発サイト「THINK NOW ハンセン病」を立ち上げた。同病に対しては、医学的には、解決の方向に進んでいるが、患者やその家族に対する差別・偏見は根強く残っている。同サイトでは、差別撤廃を訴えるメッセージ動画を一般から募集しており、ダライ・ラマ、日野原重明、マツコ・デラックスら著名人が無償で呼びかけに協力している。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
ハンセン病は、らい病とも言われ、皮膚に発疹ができたり、身体に変形をもたらす感染症として、人類から恐れられてきた。治療すれば治り、感染力も低い病気なのだが、人々からやみ嫌われた原因は、政府の隔離政策にある。
政府は1907年、「らい予防に関する件」を制定し、患者を療養所に隔離した。さらに、1929年には、「無らい県運動」が全国的に起きた。同運動では、各県が競い合うようにハンセン病患者を強制的に入所させた。1931年には、強制隔離の政策が施行され、在宅の患者も療養所へ強制的に入所された。
政府のこの対応に対して、患者たちは、「不治の病ではない」「自分たちは犯罪者ではなく、病人だ」と改正を求め続けた。研究者や患者たちは団体を組み、強制隔離された患者が結婚するための条件として行われていた優生手術(人工妊娠中絶)にも反対活動を起こしたが、その訴えは認められなかった。1948年に成立した「優生保護法」では、対象としてハンセン病が明文化されたので、ハンセン病患者の本人の同意を得ての、優生手術(人工妊娠中絶)を認めることになってしまった。
1953年には、患者たちの猛反対がありながらも「らい予防法」が成立した。同法は、ハンセン病患者の人権を侵害し、差別をより一層強く助長したといわれている。この法律は、強制隔離、継続強制入所に加えて、働くことを禁じ、さらには外出までも禁止した。病気が治ったあとの退所規定も定められていなかった。
この法律は、1996年に廃止されたが、40年以上続いたことで、ハンセン病患者に対する社会の誤解・差別・偏見は強固なものとなった。
施設の入所者は、既に80代と高齢となり、後遺症で重い身体障がいを持っている人もいる。家族からも隔離されたことで、絶縁され、患者がいじめや差別があったことを講演会や記事で訴えても、「余計なことをしてくれるな。迷惑がかかる」と嫌われる始末だ。安心して、退所することもできない。
■「なかったこと」にしない
ハンセン病は医学的に解決の方向に進んでいる。かつては、恐しい感染症として扱われていたが、1980年代に効果的な治療法が確立し、その治療薬が無料配布されだした。80年代には全世界で500万人を超えていた患者数も、現在は19万人ほどだ。人口1万人あたりの患者数が1人未満で制圧と定義されるが、未制圧国はブラジルだけだ。
日本には、ハンセン病患者は1500人ほどおり、平均年齢は80歳ほどだ。年齢からして、残り20年ほどで寿命を迎えるとの見方だが、このままでは、患者たちが受けたいじめや差別も、「なかったこと」にされてしまう。
来年1月27日には、都内でハンセン病の差別撤廃を訴えるグローバルアピール(世界宣言)の式典が行われる。この日に合わせて、SNSの力を生かして、ハンセン病から人間を考えるキャンペーンが行われている。それが、「think now ハンセン病」だ。
一般から動画メッセージを募集し、ハンセン病の差別撤廃をめざす。現在、ダライ・ラマや日野原重明、マツコ・デラックスなど、著名人が続々と呼びかけている。
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