地域おこし協力隊だった2人の女性が愛媛県・奥伊予の農産物や手仕事品をフェアトレードの精神で届ける活動を行っている。ネットショップ「フェア田舎トレード奥伊予。」を立ち上げた。手作り品の尊さを再確認できる取り組みが、奥伊予の片隅で起きている。(今一生)
フェアトレードは、生産者が搾取されず、正当な値段で農作物などを消費者に売れる公正貿易のこと。
奥伊予の畑は狭く、野菜がたくさんとれる土地でもない。30年前までは牛が耕していたが、機械が入らないところを鍬で耕すのも当たり前という。
1つひとつの生産品に手仕事の手間がかかる。少子高齢化で、生産性向上に取り組める若者もいない。
長南小春さんと井上桃子さんは、地域おこし協力隊として現地に移住し、3年間活動をした。活動を終えてからの2年間で、「奥伊予の抱える問題は労働の対価として十分なお金をいただくということが農産物と手仕事品には充分に行われていないこと」と発見した。
長南さんは、大学を卒業してから出版社に就職後、愛媛県の西予市に移住した。地域にある公民館活動を手伝った。そのうち、住んでいた地域ではみかんがとれず、ゆずや栗がたくさんあったので、ゆずこしょうを作りたいと思ったという。地域の農家さんからも売ってほしいという声が上がってきたので、そこで始めたのがネットショップだという(長南さん)。
ネットショップでは、旬のお野菜等6種類(1200円)、しそと塩のみの減塩8%やわらか梅干し(700円)、奥伊予のお米精米3kg(1500円)、番茶香るパウンドケーキセット(2200円)、奥伊予の素材を使ったパウンドケーキ(1200円)、釜炒り番茶(1000円)、野生のはちみつ(1000円)などの商品を買うことができる。すべて税込だ(※送料別)。
もっとも、当初は農家に値付けする習慣が無く、不当に安い値段でつけてしまうこともあった。農協で全部買い取ってくれることを望み、直売所に出すことがない農家も珍しくなかった。
長南さんは、「安いと大量注文に応えるのが面倒になり、続かない」と指摘する。当初は、直接販売を試みたり、東京・青山の国連大学前のファーマーズマーケットにも出店していたが、「行政は農協などの既存とは別の場所で売ることを面白くなさそうな雰囲気だった」と話す。
それでも農家は、自分たちのペースで生産量をコントロールしながら仕事をしているという。「欲しい人に売ることを考えると、ネットショップの規模がちょうどいい。まだ商品不足。やめることは考えていません」(長南さん)。
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