紙再生サービスメーカーの山陽製紙(大阪府泉南市)は、食品加工で排出される梅の種から再生紙を作成、ステーショナリーとして販売する事業に取り組んでいる。健康食品ブームで梅の加工品の製造が増える中、その過程で出される種は2007年に海洋投棄が禁止され、処理が問題となっていた。種を炭にして紙にすき込むことで、炭の機能を持つ紙として新たな付加価値を生んでいる。(オルタナS関西支局特派員=立藤 慶子)

温かな手触りが特徴のスミデコペーパーを使った文具

温かな手触りが特徴のスミデコペーパーを使った文具

同社の創業は昭和3年、紙の販売会社としてスタートした。産業用梱包資材への進出をきっかけに紙の再生に着眼。以来、創意工夫を凝らした数々の再生紙を手掛けている。一般的に製紙メーカーが紙を作るときのロットはトン単位なのに対し、同社では600㎏からの小ロットで生産するなど、生産方法もユニークだ。

そんな同社が注力しているのが、食品加工の工程で排出される梅の種やビールの大麦粕、コーヒー粕などの製造副産物を炭として再資源化し、独自の技術で紙にすき込んだ「Sumideco Paper(スミデコペーパー)」だ。

2003年、とあるタオルメーカーから、南高梅の種を炭化させた梅炭パウダー炭を持ちかけられたことがきっかけだった。泉南市に隣接する和歌山県は日本一の梅の産地で、加工の際には大量の梅の種が発生する。この海洋投棄が2007年に禁止され、処理が問題となっていたという。社員の一人が2003年にサンプルを作ったところ、社長の目に留まり本格的な商品化に着手。試行錯誤を経て、2007年に開発に成功した。

同社によると、スミデコペーパーは、糊や樹脂といった塗布剤を使わず独自の技術で炭を固定化することにより、通常のすき込みに比べ炭の残存率が高く、炭の歩留まりが高いことが特徴だという。炭には脱臭機能や調湿機能、防カビ・抗菌機能など優れた機能があり、紙にすきこむことで、炭の持つこれらの機能を紙に持たせることができる。紙の特性を生かして様々な形状に加工することができ、現在では、調湿効果を生かした靴用シートなどに利用されているという。

さらにスミデコペーパーを通じて環境問題を身近に感じてもらおうと、スミデコペーパーでのステーショナリーづくりにも取り組んでいる。社内で出たアイディアをもとに商品化。デザイナーとコラボし、動物柄や花柄、市松模様など様々な模様をあしらったブックカバー、しおりやペーパーバッグなどが生まれている。いずれも特殊加工により丈夫で型崩れしにくく、天然の炭の色を生かした落ち着いた紙色、温かな手触りが特徴だ。同商品は3月10日まで、デザイン文具のお店「STYLE DEE.」堂島アバンザ店で販売している。

「私たちは紙創りを通してお客様と喜びを共有し、環境に配慮した循環型社会に貢献します」とは、山陽製紙の経営理念。この理念から、オフィスや会社で使用済みのコピー用紙を回収し、100%再生紙にリサイクル、ノートやメモ帳など多様な紙製品に作り変え、回収元へ販売するという独自のエコサービス事業も生まれている。小ロット生産だからこそできる、ユニークな取り組みだ。

「私たちがめざすのは、単なるリサイクルではなく、アップサイクル。元の素材や製品よりも、高い価値のあるものに生まれ変わらせる紙づくりです」と語る同社の動きに、今後も目が離せない。

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