住宅メーカーの積水ハウスと「ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン(DID)」の共創プログラム「DID対話のある家」が積水ハウス/住ムフムラボ(グランフロント大阪)の2周年を記念してトークイベントを開催した。ゲストに脳科学者の茂木健一郎氏を招き、「暗闇から見つける『くらしの幸せ』」をテーマに語り合った。(オルタナS関西支局特派員=ヘメンディンガー綾)

写真左から積水ハウス総合住宅研究所の石井正義所長、能科学者茂木健一郎氏、DIDジャパンの志村真介代表

写真左から積水ハウス総合住宅研究所の石井正義所長、脳科学者茂木健一郎氏、DIDジャパンの志村真介代表

DIDは視覚障害者のアテンドに導かれ、純度100%の暗闇を体験するソーシャルエンターテイメント。1988年にドイツで誕生し、現在世界30カ国130都市で開催されている。

「DID 対話のある家」は東京・外苑前会場に続き、国内2カ所目の常設会場としてオープンしたが、家・家族をテーマにしたプログラムは世界でここだけでしか体験できない。参加者はグループになって暗闇を探検するが、このグループを「家族」と呼ぶのが類を見ない特徴だ。

「家族」となった参加者が暗闇の中で互いに手をとり、声を掛け合い時間を共有する。すると、不思議なことに参加者同士の距離が近くなる。DIDの日本初上陸以来、何度も体験している茂木氏は「目が見える人が他者とコミュニケーションをとるとき、相手の第一印象など、視覚情報に頼ってしまいがち。暗闇の中では肩書きや外見という心の鎧を捨てられるので、無防備になって人の本質が見えてくる」と言う。

■幸せに気づくために。他者との出会いが必要

一方で参加者同士の絆を深めるには、暗闇の中でも自由に動くことができるアテンドの存在が大きい。茂木氏は「視覚障害って、脳科学者の立場からするとひとつの個性。例えば、彼らが月を想像する時、人の話をもとに想像力でそれぞれの月を見ている。こうした豊かな文化が僕らのすぐ隣にあるんです。DIDは目が見える人と見えない人、異なる文化を持つ人と出会える場なんです」。

茂木氏はこう続ける。「脳科学的には、人間の幸福は、ありのままの自分を受け入れること、と結論が出ています。しかし、ありのままの自分を知るためには、自分と異なる他者との出会いが必要です。DIDは目を使わない人の文化に出会える居場所。DIDを体験した後は、きっと幸福度が上がっているし、体験するごとに新たな気付きがあるはず」。

■お金ではないキャピタル(資本)とは?

DID発祥のドイツではダイアローグミュージアムがあり、聴覚障害者がアテンドする「ダイアログ・イン・サイレンス」や高齢者がアテンドを務めるプログラムもある。共通しているのは、異なる他者とのダイアローグ(対話)があること。

「これからは人とのつながりや他者との関係性が資本になる時代。DIDは暗闇を提供しているだけではない。これからのソーシャルキャピタルを創出している」とDIDジャパンの志村真介代表は言う。DIDがコラボレーションする積水ハウスにとっても、対話は重要な鍵だ。

DIDがある同社の「住ムフムラボ」は、住まいの研究・情報受発信拠点として生きることと暮らしにまつわるワークショップやセミナーを展開している。積水ハウス総合住宅研究所の石井正義所長は「私たちは生涯住宅をテーマに、あらゆる人が快適に暮らし続けられる家を研究しています。DIDを通して、いかに家族の対話がある場を作っていけるかを、みなさんと一緒に考えていきたい」とトークを締め括った。

住ムフムラボ
ダイアログ・イン・ザ・ダーク 

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