さきほどのおじさんも加わり、「ここに訳が分からん奴がいる」と紹介される始末(とはいえ、お茶は出してもらってたが)。ムフトゥールに電話をしていなかったことを思い出し、目の前で電話したが、大して効果なし。子ども達に「行こう」と誘われたので、おじさん達に「変な奴が来てしまって、ごめんなさい」と謝罪をしてその場を離れた。

子ども達は、ナワジャ村を案内してくれた後、ムフトゥールの家にもついて来てもらい、事情説明を手伝ってくれた(その時わかったのだが、前日から仲良くなって、かつ村案内してくれた子は、例のおじさんのいとこだった)。帰り道、「ムシケラだ」と僕に言ったおじさんの姿は無かった。ムフトゥールや子ども達に「また来てね」と声をかけられて嬉しかったが、「問題」扱いされたことのショックは消えない帰り道だった。

僕の職種は「村落開発普及員」である。何の仕事をしているのか聞かれたときは、「Village Developer(村を開発する者)」を直訳したアラビア語で説明している。でも、それって具体的にどんな仕事なんだと聞かれると、本当に戸惑う。今のところ、観察と情報収集だけで、「仕事」と言えそうなものは何もしていないし、先ほど説明したような「リソースとしての自分」と「仕事」とは少し違うと思う。

「何でもやれるが、何もできない」というのが、自分の職種に対する認識で、そのことはすごく気に入っている。しかし、仕事を説明できないと言うのは何とも、もどかしいものである。自分の関わっているプロジェクトの説明をして、かつ医者でもない看護婦でもエンジニアでもないとなると不思議な顔をされる。

しかし、そんな僕に対して「よく来てくれたね」と言ってくれる人が多い、というのも事実だ。具体的な僕の仕事はよく分からなくても、僕という人間を気に入ってくれて、「また遊びにおいで」と満面の笑顔で言ってくれるおじさん達に囲まれる。僕がなぜここに来ているのか、新しく会話に加わったおじさんに得意そうに説明してくれる人もいる。

「お前は何しに来たのだ」。まだまだ曖昧な答えしか出来ない。けれど、一緒にお茶を飲んで、いっぱい話して、いっぱい笑って、色んなことを教え合って、信頼関係を築いていく。そうしていく中で、ちょっとはうまく言えるようになる気がする。何かが動き出していく気がする。今は、スタートは、ムシケラであっても。

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