語学を学んだ訓練所生活中に覚えたダブルダッチ(二重の大縄跳び)も出来たら良いな、と思い、首都のダマスカスで買った縄を持って、外へと一歩踏み出した。家からSUZUKI乗り場に向かっていると、大家さんが車に乗って登場。「どこへ行くんだ?」との質問に答えると「乗っていきな」と嬉しい言葉。

車で行くと5分、だが歩くと30分近くかかる道のりを行き、「ここで待っていればナワジャに行けるから」ということまで教えてもらった(前日、SUZUKI乗り場が分からなくて町の人に聞きまくったが見つからなかった)。すぐにやってきたSUZUKIに乗ると昨日の帰りと同じ運転手だった。行き先を言う前に「今日もナワジャ村か?」と聞かれてうなづく。

村の入り口に着くと、村に向かう50代くらいのおじさんが一人。「アッサラームアライクム」と声をかけ、手を差し出す。握手こそ交わしてくれるものの、訝しげな顔をしたまま、「何しに行くんだ?」と聞いてくる。「小さな友達が待ってるもので」と笑うが、彼の厳しい表情は崩れない。道が分かれたので「それじゃあ」と納得できない顔をしたままのおじさんと別れた後、すぐに子ども達は寄ってきた。

が、右手に見える家の軒先で、30代くらいのおじさんと青年が座って手を振っている。礼儀を重視した方が良いだろうな、と挨拶すべく小走りにその家に駆けて行った。「アッサラームアライクム」と握手した後、やはり「何しに来たんだ?」と聞かれて、たどたどしいアラビア語で説明をした。子ども達と約束したことと、シリアに来ている理由を。

「ムシケラだらけだな」。説明の後、彼は真顔で僕に言い放った。ムシケラ(مشكلة)とは、アラビア語で「問題」という意味である。僕のカバンの中をチェックし、辞書、水筒、縄を取り出しては、訳が分からないという顔をする。縄は縄跳び用だということをアピールするために跳んでみせた(あまりに独特なリズム感のシリアの子ども達相手では大縄はかなりの難関だった)が、何の弁解にもならなかったらしい。

ムフタールが見せてくれた井戸

ムフタールが見せてくれた井戸

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