「俺はムスリム(イスラム教徒)だ。お前の宗教は何だ?」と聞かれることが多々ある。「お前はムスリムか?」髭をたくわえた僕には、宗教を尋ねる前にそう言われることもある。そんな時は「まだ」と答えている。「ムスリムのことはわからないから、2年間しっかり知ってから考えようと思っている」と説明すると、「そうかそうか」と笑ってくれる。
そんな風に、シリアに来てから「日本の宗教」を説明する機会があまりに多くなったので、『日本人はなぜ無宗教か』(阿満利麿、ちくま新書)という本をあわてて読んだ。僕の感じていることと共感したので、自分の宗教を説明する時は、その本からの情報を参考にした説明をしている。この本によると、日本の無宗教とは、「神を信じない」というわけではなく、「特定の宗派の信者ではない」ということのようである。また、文化庁発行の『宗教年鑑』によると、信者数は神道系1億600万人、仏教9600万人、キリスト教系200万人、その他1100万人、合計すると2億1500万人となって、日本の人口の約2倍となる。つまり、家に神棚と仏壇がふたつあるように、神道と仏教の両方の信者となっている日本人が多く居るのである。
生きている時に進行するのは「伝統的宗教」。これは文化のようなもので、宗教と意識していないまま、毎日をどう生きるのか、あるいは年中行事として形を変えている。年に何回か神社にお参りに行く、祖先を大事にするなどがそうだ。聖書やコーランのような聖典は無い。